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Vol.053 言葉は人を殺す

Vol.053 言葉は人を殺す


2018年05月15日更新



やや極端な表現ではありますが、「言葉は人を殺す」ということを講師に言うことがあります。
殴る、蹴る、包丁で刺すなど、物理的な攻撃によって、人が傷つくというのは誰にでもわかります。
しかし、人間は「身体」のみで構成されているわけではありません。
実体はありませんが、誰にでも「心」というものがあるわけです。
「身体」が傷つくのと同じように、「心」も傷つきます。
致命傷を負うことはなくとも、誰かの心ない一言が、喉に刺さった魚の小骨のように、何年経ってもずっとひっかかる・・そのような経験は誰にでもあるのではないかと思います。
幼い頃に、自転車で転んでできてしまった古傷のようなものですね。
そうかと思えば、何度思い出しても、その瞬間に心の片隅にぽかぽかと陽気が射すような「忘れられない嬉しい一言」もあるわけです。

教師の仕事において「勉強をわかりやすく教える」ことはとても大切なことです。
しかし、それ以上に大切なことがあります。
それは「生徒のやる気を引き出す」ことです。
生徒のやる気を引き出すために、教師の取れる手段が「聴くこと」と「言葉を伝えること」。
そのため「超」がつくくらいに優秀な教師は、話を聴くのが上手いということに加えて、「強い言葉」を必ず持っています。
「強い言葉」は刃物のようなもので、正しく使えば生徒に良い影響を与えますし、悪く使えば生徒の心に傷を残すことだって出来てしまいます。
ご両親から子どもにかける言葉に関しても全く同じことが言えます。
一般的に、相手の背景を深く知ることで言葉は強くできますから、子どもの情報を多く持っているご両親の場合は(他人に比べて)言葉が強くなりやすい傾向があります。
「今日の学校はどうだった?」のように、「普段の会話」に関してそこまで神経質になっていただく必要はありません。他愛のない会話が親子コミュニケーションの潤滑油になりますから、ここは「質よりも量」を大事にして、たくさん声かけしてあげてもらいたいと思います。
では、「普段の会話」に当てはまらない会話とは何か?
言葉選びを慎重に行った方が良い場面とは何か?
それは、「相手(子ども)を主語にした会話」です。
例えば、「学校の先生の話」「好きな芸能人の話」「友達の話」、こういった話題は子どもが責任の主体になることもありませんし、子どもが何かを変える必要もありません。
しかし、「試験結果についての反省」や「進路選び」といった話題は、子ども自身の問題ですから、「何を言われたか」が心に残りやすくなります。
ちなみに、良い教師は「相手(生徒)を主語にした会話」の土俵に生徒をのせるのが上手です。「嫌なことを言われる」と思うと、土俵に上がろうともしてくれませんから、良い言葉を積極的にかけて警戒心を取り除き、真剣な話をするための前準備を整えていきます。
「厳しいこともたまに言われるけど、自分を承認してくれる言葉が多くて、話をすると元気になる」と思えば、生徒は自分のことを積極的に相談に来るようにまでなります。
この構図は親子でも変わりません。
「真剣な話をしようとすると逃げてしまう」と嘆く親御さんにたまに会いますが、それは真剣な話をしたときに(子どもが)聴きたくない話ばかりをしてきたからです。
そしてこのような親御さんにほぼ共通しているのが、言葉が強すぎること。
それは本来、正しく使えば子どもの人生に対するやる気はもっと高まったはずのものです。

どんな言葉が、良い言葉になるかということに関して法則性を見出すのは難しいですが、「悪い言葉」に関しては明確な基準があります。
それは「相手の人格を否定しない」ということです。
人格と言ってわかりにくければ、「変えられないことを否定しない」「価値観を否定しない」の二つの原則を覚えておけば、大事故は防げます。

やる気を引き出すためには「話すこと」以上に「聴くこと」が大切です。
<関連記事>
Vol.023 誰にでもできる!子どものやる気を引き出す「聴く技術」その1
Vol.024 誰にでもできる!子どものやる気を引き出す「聴く技術」その2
Vol.025 誰にでもできる!子どものやる気を引き出す「聴く技術」その3
「聴く」ことで信頼関係が形成されたら、ぜひお父さんやお母さんの思っていることを伝えてあげてください。
ここ一番での「強い言葉」は、人生を変える力を持っています。