Vol.104 強制退塾という手段

Vol.104 強制退塾という手段



2019年05月21日投稿
2020年07月14日更新



5月19日(日)に、中学3年生のご両親に向けた高校受験説明会を開催させていただきました。
教室には入りきらないくらいの保護者様にお集まりいただき、大盛況の会となりました。
ご参加くださった保護者の皆様には心より御礼申し上げます。
ありがとうございました。

説明会風景

受験生は夏以降、いよいよ受験勉強が本格化します。
夏休みに本気で成績を伸ばそうと思ったら、一日平均8時間以上の勉強時間を確保しなければなりません。そこまで勉強をするのは多くの中学3年生にとっては初めての経験なので、プラスジムではご家庭任せにせずに大半の時間を塾で過ごしていただく方針を取っています。
たくさんの生徒とそれだけ長い時間過ごしていただくことになるので、そこには「お互いが快適に勉強を行うための規則」があります。この「規則」は塾生にとっては絶対的なものであり、守れなかった場合には退塾していただくということも充分にありえます。
「迷惑行為を防ぎ、他の生徒にとっての学習環境を守る」という理由のほかに、通っていただくことに意味がないと判断した場合にも退塾勧告は行われる場合があります。
しかし、中長期的に見れば、それらは退塾させられる生徒本人のためにもなると考えています。

再度、整理します。
仮に私たちが「強制退塾」という強引な手段をとる場合、それは以下2つのどちらかのケースに当てはまるときです。

A:「規則」が守れないケース
B:遅刻や宿題忘れなど、本人の問題だが、改善の意志がないケース

このような書き方をしているので、生徒を頻繁に退塾させている塾と思われると困るのですが(笑)、プラスジムで強制的に生徒を辞めさせたことは一度もありません。
Aのケースに関しては、そもそもそうした状況にならないように日頃から指導をしていますし、Bのケースに関しても本人の意志のある限り、粘り強く何度も何度も指導を継続します。
ただ、AとBのケースに関して、「どこを見ているか(=判断基準)」には明確な違いがあります。
Aは生徒の「行動」に着目しており、Bは生徒の「意志」に着目しています。
例えばAのケース、「自習中の私語」は規則違反なので、あまりにひどい(※)と「あと一度、同じ場面を目にしたら退塾してもらう」のようにはっきりと言います。
(※レッドカードを出すまでの許容回数は規則違反行為の内容によって差があります)
この場合、次に同じ場面を目にすることがあればアウトです。「次からちゃんとしますから」と生徒に懇願されても、約束を破った場合は厳格に対応します(するつもりでいます)。
Bのケースは、たとえば遅刻を指摘した際に「遅刻をなくす気はない」のように生徒から改善の「意志」のない発言が聞かれたタイミングがレッドカードです。

このどちらのケースにおいても、強制退塾がその生徒の将来のためになると考えています。
Bのケースについての説明は不要かと思います。全くやる気がないのであれば、やる気のある他のことに時間を使った方が有意義ですし、本人のためになります
通塾は義務ではないのですから。
そもそもやる気がないので、強制退塾させてもあまり問題にならないと思います。
本人も喜ぶことでしょう。
難しいのはAのケースです。
本人は強く通塾の継続を望んでいる場合もあるでしょう。
しかし、理屈から言えば本人が辞めることを強く望んでいなければいないほど、強制退塾の教育効果は強く作用します。

「規則」が守れない人間というのは、「規則」そのものの重要性やそれを破ることによって他人が被ることになる損失の大きさや痛みを理解することができていません。
ここでの理解は、「頭レベル」ではなく、「心レベル」で理解している必要があります。

Vol.092 受験の重要性を子どもが理解できない理由

その「痛み」を何らかのかたちで自分が引き受けることによって初めて、そのタイプの人間は「いけないことをしてしまった」と心で理解します。「規則」を守れない傾向のある人間はなるべく若いときに、こうした「痛み」を経験しておくべきだと私は考えています。
「何をしても許される」という意識が暴走してしまってからでは手遅れです。
犯罪に手を染めて警察に捕まるようなことと比べれば、塾を強制退塾させられるくらいは大したことではありません。「高校退学」のように、それが本人の進路に大きな支障をきたすような場面では慎重に判断される必要がありますが、塾はそういう場所ではないわけですし。
ご両親が子どもを見放すことは不可能です。
子どもがこれから社会で関わる人たちは親ではないわけですから、悪いことをした場合に過度の「甘え」は許されないということを誰かから学ばなければなりません。
大人として接し、厳格に対応するのが、その生徒の将来のためにもなると考えています。

Spoil(スポイル)という英単語には「台なしにする」といった意味がありますが、同時に「甘やかす」という意味もあります。
過度な甘やかしは、結果的にその生徒の将来をダメにします。
万が一、その日が来たらいつでも強権発動する覚悟を胸に、日々の仕事に励んでいます。


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