Vol.160 成功はかけ算
2020年06月30日更新
経営コンサルタントの小宮一慶さんが著書の中で「ダメな会社ほど新規営業がうまい」とおっしゃっておられましたが、教育サービスも同じだと思います。
ではいったいダメな塾や教材はどんな方法で生徒を集めているのでしょうか。
結論を先に言うと、「即効性」と「手軽さ」です。
例えばですが、ある教材の販売ページでは以下のような利用者のコメントが紹介されていました。
「たった2週間で子どもの成績が劇的に伸びました!」
半信半疑ながらも、わらにもすがる思いで申込をしてしまった方もいらっしゃることでしょう。
しかし、広告に書いてあるような成績の伸びはまず起きません。
書いてある内容が事実であるとして、なぜそんなことが起きたのでしょうか。
その理由は、成功はいくつかの要素のかけ算で生まれるものだからです。
少し数字を使って考えてみます。
難しい計算はまったくありませんのでご安心ください。
仮に、成功のために必要な要素を●と▲と■の3つとして考えてみます。
これをかけ算してみます。
●6×▲4×■5 = 120
記号の横に並んでいる数字は、その要素の完成度です。
ほとんどの場合、同じくらいのレベルの数字が並ぶ※ものです。
※この意味は通知表を例に考えてみるとわかりやすいでしょう。通知表に1と5が混在している生徒は滅多にいません。
ところがここに、なぜか■の値だけが著しく低くなってしまっている生徒がいたとしましょう。
他のことはとても良く出来るのに、特定のことだけが完全に抜けてしまっているのです。
●8×▲8×■1 = 64
みたいな感じですかね。
仮に、生徒に足りていなかった■をこの教材が上手く補えたとします。
■が2になったとすると、かけ算の合計値は128。
こうした場合、この教材の力で短期間での劇的な伸びが現実化したことになります。
たしかにそうなのですが、少し待ってください。
「欠けている要素」がなにかを適切に見極めて、それを埋めるためにこの教材を購入して成績が伸びたのであればたしかに素晴らしいです。しかし、最初からその「欠けている要素■」がわかっていたのに、なぜそれまで何の対策も行わなかったのでしょうか。それもたった2週間で解決可能なくらい簡単なことなのに。
苦手意識があってその現実から目をそらし続けていたとかそういう理由も考えられますが、「この教材を買っただけで簡単に伸びた」というのであればその可能性も低そうです。
あるいはこの教材だけが奇跡的にわかりやすい解き方で教えてくれるとか。
そんなはずはないでしょう(笑)
もし、そんなものが存在するのであれば、世の中の教材はすべてその教材になっています。
したがって、以下のことが言えます。
この成功は偶然の産物なのです。
自分では何が成績不振の原因かわかっていなかったけど、「たまたま」その教材が自分の課題にぴったり当てはまったから急に成績が伸びたのです。
勝負まで時間的余裕があるのであれば偶然を期待して色々試してみるのも悪くないと思います。
しかし、そういう時期は先ほどの計算式で言えば●や▲の値もまだ小さいですから、その教材が仮に欠けた■にぴったりはまったとしても、成績はあまり伸びません。
勝負の直前期であれば、奇跡のような伸びはたしかに可能性としてはあります。
■や▲が仕上がってきているからです。
しかし、直前期に偶然を期待して新しいものを試すのは無謀である、と言わざるを得ません。
何事も、直前になるほどに失敗の可能性が少ない現実的な策で固めていくのが定石ですから。
「たまたま」を狙っても、そのほとんどは失敗に終わりますし、直前期の失敗による時間のロスはそのまま致命傷になります。
つまり、期間的に余裕があろうがなかろうが、あやしいものには手を出すべきではありません。
あやしいというのは、短期間での異常な成果や手軽さをPRしているものです。
まずは、自分の目標を実現するために必要な●や▲や■がなにかを知ること。
その上で、それぞれについて自分の状態をきちんと把握すること。
手を打つのはそれからです。
派手な広告に反応して、安易な解決策に飛びつくと痛い目にあいます。