Vol.175 不合格になる人
2024年08月27日更新
私は河合塾京都校で浪人時代を過ごしました。
高校は進学校に通っていませんでしたから、ピリピリとした受験の空気感のようなものはそこで初めて体験することになります。
入学して翌々週くらいに、英語の模試の成績順に席を並べられたことには度肝を抜かれました。
受験とは、すごい世界なのだなぁと思ったのを覚えています。
まさか自分が、それに関わる仕事に就くとは思ってもいませんでしたが・・。
入学直後のオリエンテーションで言われたことを今でもはっきりと覚えています。
河合塾社員の方だったと思うのですが、開口一番、このようにおっしゃられたのです。
「受験で不合格になる人は旅行のときに荷物が多くなる人です」
これには、ガツンとやられました。
なぜなら、自分自身が旅行のときに荷物が多くなるタイプだったからです。
しかし、とてもわかりやすいたとえだと思います。
それから20年以上経った今でも覚えているのですから。
受験のための勉強に限定するのであれば、この言葉は正しいです。
楽しみのために勉強しているのであれば、不正解でしょう。
なにを目的として学ぶかは人それぞれですし、それによって正解も変わります。
この場では、いったん「正解」の立場で話を進めていきます。
受験指導において、結果を出す講師だけが意識できていることがあります。
それは生徒の「受験までの総勉強時間」に対する意識です。
その「時間」で最大の成果を出すにはどうすれば良いのか。
結果を出す講師は、むやみやたらと積み上げる指導は行いません。
逆に、いかに「引き算」するかということを考えています。
一例を挙げましょう。
以下は都立高校入試国語の授業中、講師から出てきた言葉。
いとへんの「績」は、「成績」と「業績」と「功績」の3つ
受験指導が得意な講師からしか出てこない表現です。
なぜなら、自信を持ってこの発言をするためには過去問を少なくとも10年前くらいまではさかのぼって「何が出て、何が出ていないのか」を知っておく必要があるからです。
そういう知識がない講師は「あれもこれも」と出題可能性の限りなく低い漢字まで教え始めてしまい、生徒は「本当に覚えておくべき漢字」に集中することができません。
その3つ以外が出てくる可能性もゼロではないでしょう(例えば、実績や戦績)。
しかし、その出題可能性が限りなくゼロに近いのであれば思い切って切り捨てる。
この切り捨ての判断こそ、経験のない人間(生徒)には難しいのです。
過去のデータから導いた自分なりの仮説をもとにして、「ここまで」と線を引くためには教える側に知識や洞察力や勇気が必要です。
こうした講師が指導中、アタマの中で考えているのは「その生徒にとっての優先順位」。
逆転合格を果たすような生徒が考えているのも優先順位。
なにが大切で、なにがそこまで大切でないか。
これからの時期、受験生はそうした観点を持って勉強に励んでください。