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Vol.191 傾聴しなくても良いかもしれない

Vol.191 傾聴しなくても良いかもしれない



2021年02月02日投稿
2021年02月02日更新



生徒のやる気を引き出すコミュニケーション技術として、「傾聴」があります。
信頼関係を築きたい場合や相手を元気づけたい場合にも用いることができます。
この仕事を始めた当初は、私もこの「傾聴」の技術を用いて生徒の悩み相談に乗っていました。
しかし、最近になってふと気づいたことがあります。
いつの頃からか、私はこの「傾聴」の技術をあまり使わなくなっていたのです。なぜ、使わなくなったのかと言うと、「傾聴」よりも確実性高く同じ目的を達成できる方法論を体得したからです。
しかも、「傾聴」より効果も大きいのです。
技術のベースにあるのは「傾聴」スキルです。
しかし、一見すると行っていることは対照的です。
この方法は、いくつかの質問を行った後、こちらがほとんど一方的に話をするのです。

「傾聴」の基本的な考え方、それは相手の心の中にある不安や苛立ちを共同作業で言語化していき、心情への共感を示すことによって相手の心の負担を軽くしていくことです。
たしかにこれは効果的なのですが、多少の問題があります。
相手の課題認識能力や言語化能力が低い場合、会話内容がなかなか核心に近づかないため、何度も何度も傾聴を繰り返すことになるのです。
限られた時間内に一定の成果を狙いたい場合だと、この方法だと成功率が下がります。

では、何をするのかと言うと、一直線に相手の課題意識のど真ん中をとらえにいきます。
そもそも、相手の心の中のモヤモヤは言語化されていないことが多いのですが、それをどんどん言語化し、悩みの正体を明らかにしていきます。
相手の課題意識を完全にとらえると、相手の表情が変わります。
「そう!自分が言いたかったことはそういうことなんです!!!」という表情になります。
相手の目に涙が浮かぶこともあります。
この段階で、傾聴して相手の悩みを上手く吐き出させた場合と同じような効果が期待できます。
それを相手が言葉にしているか、こちらが言葉にしているかの違いはありますが、自分でも原因のわからなかった心のモヤモヤが言語化されると心が軽くなるのだと思います。

この先は解決策の提案です。
「このようにしてみてはどうか?」ということについての話を行います。
その際、心がけていることが2つあります。
1つは、自分語りをしないということです。
「自分がこうしたからこうするといいよ」という話はまずしないのです。では何の話をしているかというと、だいたい①歴史上の人物や偉人、有名人の格言 ②心理学などの研究結果 ③同じような事例 の3つのうちのどれかです。あくまでも一般論として、「先人はそういう悩みをこういう風に考えた」、「心理学ではこういうことが言われている」、「前に同じことで悩んでいる同じ中学校の先輩がいてね・・」といった感じで話を展開していきます。たまに自分の話をすることもありますが、それはあくまでもアイスブレイクです。経験上、自分語りはほとんど相手の心に刺さりません。自分が本気で悩んでいることに対して、「社会にはこんな考え方や解決策が存在しているよ」という話なら、相手はきちんと話を聞きます。
次に心がけていることは、解決策の提案までしかしないということです。
「こうしなさい」とは言わないのです。
相手の悩みに対して、こんな考え方がある、学術的にはこう言われている、同じような状況を先輩はこうして突破した、といった話を紹介するだけで、それを押しつけることはしません。
押しつけないから、素直に話を聴けるのだと思います。
さらに言うと、こうした話をする本当の目的は問題解決ではないのです。
こうした話を通じて、明るい未来の展望を伝えているだけなのです。
「その悩みは解決できるし、その先にはきっと明るい未来が待っている」と。
本質的なところでは人間はみんな同じようなことで悩む生き物であり、悩みながらもそれぞれ何とかそれを乗り越えて生きています。
悪いこともたまにあるけど、嬉しいことや楽しいことだってたくさんある。
そうした前向きな感情が相手に伝播すると、話し終わった後に相手は元気になります。


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