Vol.222 良い先生は話が長い

Vol.222 良い先生は話が長い



2021年09月14日投稿
2021年09月14日更新



良い先生選びについての話。
どうも世間では、「良い先生とは話が短いものである」と考えておられる方が多いようです。
実はこれ、ものすごい勘違いです。
長い話の典型的な失敗例として持ち出されるのが、全校集会の校長先生のお話。
誰もが心に思い当たるところがあるため、「たしかに!」となるのですが、よく思い出してください。
校長先生のお話は本当に長かったのでしょうか?
長く感じた、だけではないでしょうか?
このたとえは「話の長さ」ではなく、「長く感じる」ことが問題であるはずなのです。

私は、いわゆるカリスマ予備校講師と言われる方や、何冊も本を出版して各地の講演会やセミナーで引っ張りだこの人気講師、全国区で名の知れた学習塾の塾長先生、といった方々とSNSを通じて繋がっていますが、こうした方々の投稿をみると、長文投稿が実に多い。
身のまわりで教え上手だな、人を納得させて動かすことに長けているな、と思う知人がいらっしゃったら、ぜひそうした方々のSNS投稿を観察されてみてください。
おそらく長文なはずです。
話が長くなってしまう理由はいくつかあるのですが、良い先生の最も根本的な資質として「人に何かを伝えたい!」という情熱を宿している人間かどうかという点が挙げられます。
自分が学んだ知識、独自の理論や経験を、これからの人生に役立てて欲しい!
生徒を前にすると、良い先生というのは、こうした想いが自然とあふれ出てくるものです。
その上に博識ですから、相手が望む限りは話のネタもそう簡単には尽きません。話の点と点をどんどんと繋ぐようにして、話の全体像(=体系)をいつの間にか組み立てていきます。
相手の頭の中に、きちんとした体系をつくることで納得度が高くなることや、自分が教えたことを忘れにくくなるということを感覚的に理解しているのです。
短い話で体系を伝えることはできません。
もちろん、話の途中で相手を退屈させてしまうようでは失格です。
これは良い先生の第二条件となりますが、その場の相手の気持ちの察知能力に長けています
相手が自分の話に興味を持って聞いているかどうかを判断する力があるため、ダメだなと思ったらそこで話を止めることができます。退屈そうにしているのに話し続けるということはありません。
相手がキラキラと目を輝かせて話を聞いているから、結果として話が長くなるのです。
ではなぜ相手はそのようになるのでしょうか?
これが第三条件、「伝える技術」のレベルが高いからです。
抑揚、緩急、間・・、伝え方にはこうした技術があり、その使いこなしのレベルの高さによって、同じ内容でも話のおもしろさは格段に変わってきます。
話がおもしろければ、聞き手はそれを「長い」とは感じません。

話が長くておもしろい良い先生でも、大人数を相手にする講演会や不特定多数の読者を想定した文章となると、まったくその魅力を発揮できなくなってしまうことがあります。
聴衆の反応がバラバラ、あるいは読者が見えないこと、がその原因です。
解決策として、そこでどんな話をすると最も喜ばれるのかを最大公約数的に考え、話す内容を極限まで削ることがあります。この場合、たしかに話は短くなりますが、普段からその先生の話が短いわけではありません。

基本的には、話が長い、でも内容が面白いからあっという間に感じる。
塾でも家庭教師でも、そういう先生を探すべきなのです。


この記事をシェアする