Vol.225 どうすれば勉強するようになるのか
2021年10月05日更新
前回記事で、まず勉強しないことにはお話にならないことを書きました。
そうは言っても「どうすれば勉強するようになるんだ」というのが、全国多くのお父様お母様のお悩みだと思うので、本記事はそのことについて書きます。
前提として、先に満たさなければならない条件があります。
それは、本人の中に「勉強しなければならない理由」があることです。
一般的な中学生の場合、最も代表的な理由が「定期試験」と「受験」。
私は「風が吹く」と表現していますが、「定期試験」だと2週間前、「受験」であれば1年前(働きかけなければ最も遅い生徒で1か月前、平均的な生徒で3か月~6か月前)くらいから、本人の中に「勉強した方がいいかも・・・」という気持ちが少しずつ生まれてきます。
無風では帆を立てても、船はなかなか前へ進んでくれません。
「外的要因」と「内的要因」の両面で考えなければならないということですね。
「外的要因」の条件が整っていても、つまりはびゅんびゅん風が吹いていても、適切な船の走らせ方を知らないと、やはり船は前に進みません。
上手く風をとらえて、どんどん前に進んでいくまわりの友人たちをみて、本人の中では危機感ばかりが募っていきます。「勉強しない、勉強したくない」のではなく、どうすればそんなに長時間勉強ができるのか、親も本人もわかっていない、方針も立っていない状態です。
やらなければならないとわかっているけどできない、は本人もまわりも最も苦しい状態です。
こうした状態を解決に導くのが、私たち学習塾の役割です。
「都立受験コース」では、次の5つの働きかけを行っています。
やる気が原因ではないということに注意してください。
1 「やること」と「やり方」を具体的に示す
最も優先度が高いです。本格的な勉強経験のない生徒は、「自分のやっていることに自信(確信)が持てないため勉強に身が入らない」状態になっています。言いかえると、何を勉強すればいいかわからないから勉強していないのです。実際、「やること」と「やり方」を具体的に示すだけで、過半数以上の生徒は勉強をきちんとするようになります。これは塾の役割なのですが、実際のところ、いま一つの塾や家庭教師はこの時点で失敗しているようです。なぜ、それが難しいかというと生徒にとっての適量の見極めが必要だからです。仮に、週1回の面談で「1日3時間」の勉強をさせるとなると、その面談で21時間分の「やること」を提示しなければなりません。そのため、私たちは面談だけですべてを指定することはせず、面談では大まかな方針だけを決めて、毎日の勉強の様子を教室で見守るというやり方をしています。手間と労力はかかりますが、このやり方が最も成功確率が高いです。
2 成果確認のための機会を設ける
定期試験であれば本番まで1週間、2週間なので良いのですが、受験対策となると、勉強の手応えを持たせないまま1年間勉強し続けるのは不可能です。そのため、「都立受験コース」では毎週学習内容の確認のための小テストを行っています。勉強時間が増える夏休みには、もう少し規模を大きくした「週末テスト」という確認テストを行います。指示した学習内容にきちんと取り組めていれば満点に近い点数が取れる内容になっており、生徒たちはそこで自分の勉強成果に関しての手応えを得ながら、学習を続けることになります。
3 気分の波に対応する
勉強のやる気は上がったり下がったりと、常に状態は一定ではありません。何らかの理由でそれが大きく落ち込んでしまうと、学習リズムが乱れ、元に戻すのにとても苦労することになります。そうならないように先手を打って対応します。メンタルケアは早期発見早期解決が原則のため、私たちとしても特に気にかけている部分です。講師の情報共有の場では「学校の友人ともめたらしい、お母様と喧嘩してイライラしている、定期試験が思うようにいかず落ち込んでいる」などについての情報が毎日何件も飛び交っています。何かあった際、基本的には講師は話を聴く役割に徹し、生徒の気分の乱れを少しでも回復できるように尽力します。
4 勉強場所を指定する、確保する
特に大量勉強期に関してですが、家ではなく塾で勉強してもらうという方針を取っています。同じ場所で休んだり勉強したりするのは、実は勉強苦手な生徒にとってかなり難しいこと。家は休む場所でもあるので、実は勉強環境としては不向きです。場所を分けてしまうことで「ここは勉強する場所」と意識のスイッチが自動的に入り、ストレスなく勉強できるようになります。塾に通えないなど、どうしても事情があって家で勉強しなければならない場合は、勉強エリアを分けてしまう方法が有効です。徹底的にやるならビニールテープを準備しましょう。「ここは勉強エリア」と制限し、そこでは勉強以外のことを絶対にしないようにすれば、意識のスイッチが入りやすくなります。
5 仲間の存在を意識させる
仲間=友達ではありません。仲間というのは、同じ目的に向かう同志のこと。人間は意志の弱い生き物であり、気持ちだけでがんばるのは不可能です。自分にとって経験のない領域の挑戦であれば尚更です。都立受験コースの夏期講習で言えば、「みんなが頑張っているから自分も頑張る」方式で、高い壁に挑戦しています。
色々と書きましたが、実はこれらはすべて「対症療法」です。
お薬を処方するようなもので、すべて外からの働きかけによる解決策なのです。
中長期的にきちんと自分の力で勉強をがんばれる子になるためには、「原因療法」が必要です。
根本的な解決策は一つしかありません。
それは、勉強をした結果、きちんと成績が伸びること。
それがないと「対症療法」はいつか効かなくなります。