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Vol.226 本音は逆

Vol.226 本音は逆



2021年10月12日投稿
2021年10月12日更新



思春期の子どもたちの矛盾した言動に振り回されてしまう親は多いものです。
そんなときは「認知的不協和」が起きているのではないかと疑ってみると良いかもしれません。
「認知的不協和」とは、人間が起きている現実に適応するために、それに合わせた都合の良い心理を自ら生み出してしまうことです。
1919年生まれの心理学者、レオン・フェスティンガー博士によって提唱されました。
この理論にぴったり当てはまる寓話がイソップ物語に存在します。
それは『すっぱい葡萄(キツネとブドウ)』。
狙っていたブドウを獲れなかったキツネが、「あのブドウはすっぱくて美味しくないに決まっている」と自己正当化してしまうお話です。
大昔から観察されていた人間の習性なのですね。

なぜ「勉強しなさい」という親の働きかけがダメなのかというと、それを言えばいうほど子どもに「自分は勉強している」という逆の心理作用を生じさせることになるからです。
多くの場合、子どもは自分が勉強しなければならないことはわかっています。
でも、上手くできない。
そのため「理想の自分」と「現実の自分」に矛盾が生じてしまい、苦しくなります。
この葛藤の気持ちが強く生じているときに、子どもから出てくる典型的な発言は以下のようなもの。

「高校進学(大学進学)なんて意味がない」
「自分は充分に勉強をやっている」
「勉強しても成績は伸びない」
「勉強なんてやっても意味がない」
「勉強は面白くない、嫌いだ」

こう思っているというより、このように思い込もうとするのです。
例えば、「自分は充分に勉強をやっている」と思い込むことに成功すれば「それ以上に勉強する理由」もなくなるので、いまの自分の立場や状況を正当化できます。
後ろめたい気持ちから解放されます。
この理論の恐ろしい点は、こうした発言は単なる言い訳ではなく、次第に本気でそう思うようになるという点です。自分は充分にがんばった、やりたくない、嫌いという負の感情を生み出してしまうのです。そして、その方向に向かって実際に行動するようになります。勉強を一切しなくなったり、友達と遊びに出かけたまま帰ってこなくなったり、約束を平気で破ったり、嘘をついたり・・。
こうなると、まわりは焦ってしまい、本人を何とか説得しようとしてしまうのですが、実際は言えば言うほど逆効果。
思春期の子どもがこんなことを言い始めたら、その言葉を親は以下のように解釈してください。

「高校進学(大学進学)なんて意味がない」
→なるほど、それだけ高校(大学)にいきたいんだな
「自分は充分に勉強をやっている」
→なるほど、自分でも勉強時間が足りていないと思ってるんだな
「勉強しても成績は伸びない」
→なるほど、勉強しないと成績は伸びないと思っているんだな
「勉強なんてやっても意味がない」
→なるほど、勉強は大切だと思っているんだな
「勉強は面白くない、嫌いだ」
→なるほど、勉強を好きになろうとしているんだな

本音は逆なのです。
そう思うと、ぶつくさと文句ばかり言う相手も人間らしく愛らしい存在にみえてきます。


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