Vol.252 適時性
2022年04月12日更新
先日、新人講師研修で「勉強と仕事の違いは何だと思いますか?」と学生に質問してみました。
「勉強は自分のための行為、仕事は原則的に自分以外の誰かのための行為」
こんな回答をしてくれました。
「その通りですね」と伝えた上で、さらに次のように補足説明を加えていきました。
仕事とは誰かの幸せに貢献すること、誰かにとっての価値を生みだすこと。
価値を決める主体は他人であるという点が勉強と最も異なる点。
だから、仕事においては相手が何に価値を認めるかということを正しく理解できるかどうかがとても大切。このように伝えた上で、勉強しかしてこなかった人が失いがちな視点について話しました。
それが「適時性」です。
例えば、塾講師のお仕事。
理系講師がまったく勤務できない時間帯があったとします。その時間帯において、理系科目を担当できる講師の価値は急上昇します。あるいは、定期試験前で生徒の授業がたくさんあった場合などには、「需要と供給の法則」により、1回あたりの勤務の価値が高まります。
これを私は、「ゴール前にいるだけではシュートは決められない」と表現しています。
まったく関係のないタイミングで自分勝手にゴール前に走りこんで「俺はがんばった、評価しろ」と言われても、まわりの人間を困惑させるだけです。
周囲の状況から、シュートのベストタイミングを発見できること。自分でドリブル突破するでも、仲間からパスをもらうでも良いですが、シュートにいたるまでの前提がどれだけ整っているかによって、成功確率は大きく変わってきます。
勉強は出来て、仕事が出来ない人は、これをわかっていないことがとても多い。
なにもかもがすべて自分中心なのです。
仕事において、「適時性」のない努力が評価されるということは原則的にありません。
では、どんなことを心がけるべきなのか。
そんなに難しいお話ではないのです。
人の話をよく聴くこと、そして状況をよく観察すること、です。
いつ、あなたが必要なのかを決めるのは他人であり、状況だからです。
仕事が本当に出来る人は、そこからさらに想像力を働かせて、提供価値を最大化しています。
しかし、仕事を始めたばかりの人にここまでは求めません。
経験がない人が想像すると、だいたいは相手の期待とズレるからです。
だから、まずは言われたとおりのことをきちんとこなすことから。
相手の期待がわからなければ、質問すればいい。例えば、「私は月曜日の午後は手が空くのですが、何かお役に立てることはありますか?」のようにして。
それだけでも、仕事の成功確率は飛躍的に高まります。
たったそれだけのことですが、最初からできる人はほぼいません。
仕事においても、「自分のための行為」という視点が抜け落ちないからだと思います。
がんばっているのに評価されないというのは、お互いにとって不幸なこと。
私の研修では、こんなことを教えるところから、お仕事を始めてもらうようにしています。