Vol.258 池の中の一番大きな魚
2022年05月24日更新
大学生に話をするときに良く言うのが、「池の中で一番大きな魚になろう」ということです。
この言葉を初めて知ったのは経営戦略論の勉強をしていたときで、『キャズム(ジェフリー・ムーア著、1991年)』という書籍だったはずですが、わかりやすい比喩なので、ずっと使っています。
ちなみに、教育の世界にも「小さな池の大魚効果(Big-fish-little-pond effect)」と言われるものがあります。意図するところは少し違うのですが、その先の結論は同じです。
大きな池で中途半端な存在でいるよりは、小さな池で存在感を示した方が良い。
ひと言で言えば、そういう教えなのですが、これは例えば、大企業を選ぶよりも中小企業やベンチャー企業に勤めた方が良いといった単純な話ではありません。
会社の規模は池の大きさを決める一つの基準に過ぎないからです。
実際は池の大きさは自分で自由に決めることが出来るし、その選び方も無限にあります。
わかりやすく、プラスジムで、慶応大学理工学部の鈴木先生(仮名)が活躍するにはどうすれば良いかという架空の事例で考えてみます。
鈴木先生の得意科目は数学と物理です。英語と化学はそこまで得意ではありません。
本人が一番教えたい科目は数学です。
ちなみに、勤務できる日数は週に2日程度が限界だとしましょう。
こうした中で「すべての科目を教えることのできる講師」という大きな池に身を投じると、自分が一番大きな魚になる可能性は限りなく低くなります。
というよりも、投下できるリソース量(勤務日数)の問題で、まず無理です。
そこで、狙う池を考えます。
自分の得意な「数学講師」という池で一番大きな魚になる作戦はどうでしょうか?
「全科目」の池よりはましですが、これもおそらく厳しい。
数学を学んできた人間はたくさんいるからです。
おまけに、プラスジムには高校時代に日本トップクラスの成績を出していた講師が数人います。
言うなれば、池に身を投じる前からすでに、大きな魚が泳いでいるのが見えている状態です。
もう一つの得意科目である物理の池を検討してみるというのも一つの手ですが、最初に書いた通り、池の大きさは自分で自由に決めることができるというのがこのお話のポイント。
数学を教えたいのであれば、その可能性を残したまま、一番大きな魚になれる方法はないかを考えてみる。それには例えば以下のような方法が考えられます。
・曜日や時間で区切ってみる →火曜日の10限の数学講師なら?
・生徒の学年や学力で考えてみる →勉強苦手な生徒の数学講師なら?
・他の価値を組み合わせて考えてみる →エンタメ要素NO1の数学講師なら?
・志望大学で考えてみる →慶応を目指す生徒のための数学講師なら?
・担当生徒で考えてみる →昌平君の数学講師なら?
志望大学や担当生徒で池を決める方法だと、かなり池が小さくなりますが、一番大きな魚になれる可能性はぐっと高くなります。
どのサイズ感の池を狙うべきかは、「自分の能力×投下できるリソース量」によって決まります。
池の中で一番大きな魚になると、なぜ上手くいくのか。
経営戦略論的な観点から言えば、そうなることで「選ばれる理由」を創り出せるからです。
鈴木先生のように個人レベルで考えても、それは変わりません。
教育学的な観点から言えば、それが本人の有能感に影響を与えるから、とされています。