Vol.266 うまくいく親はこれができている
2024年08月28日更新
思春期の子どもたちと接するのが上手だな、気持ちよく子どもに勉強させているな、と思う親の接し方には共通点があります。
それは視点が細かすぎないことです。
逆に言うと、親子関係があまり上手くいっていない、あるいは、子どもが勉強への意欲を失っているような場合、自分の視点が細かすぎないか見直していただきたいのです。
問題は、「細かい」には絶対的な基準がないことです。
もともと性格的に「大ざっぱ」な親の思う「細かい」と、性格的に几帳面で用心深い性格の親の思う「細かい」には相当な差があります。後者のような親には、「大ざっぱ」な視点で子どものことをみてあげてくださいとアドバイスさせていただくことがありますが、ご本人的にはかなり「大ざっぱ」に見ておられるつもりでも、全然そうなっていないケースが多々あるのです。
みなさん、口をそろえたように「言わないように我慢してるんですけどねー」とおっしゃられますし、努力していただいている様子はそれなりに伝わってくるんですけど、残念なことに、上手くいっている親はもっともっと何も言ってないです、それも我慢もせずに。
「細かい(細かすぎる指摘)」ことがなぜダメなのか?
それは子どもの成長に合わせて、視点を「ズームアウト」させることが出来ていないからです。
行動範囲が広くなるのだから、それに合わせて「もっと広く」物事を見るようにしないと上手くいきません。「木を見て森を見ず」の関わりになってしまっているのです。
上の記事に書いたように、「細かすぎる」視点は親子の信頼関係という意味でも弊害が出ます。
細かな視点で、日々の行動に親がいちいち口出しをしてきたら、子どもだって嘘の1つや2つもつきたくもなるでしょう。
嘘をつくことで、親からするとさらに信頼できなくなるという悪循環に陥ります。
こういうときには、嘘をつく子どもを育ててしまったことを反省するのではなく、子どもが嘘をつかないといけない状況を創り出してしまった自分の関わり方も同時に見直してもらいたいのです。
だいたい、どの程度の解像度で子どものことを見ておけば良いのか。
上手くやっている親はどのくらい「大ざっぱ」なのか。
子どもの性格や成長度合い、学習環境によっても変わりますので、一概に申し上げることはできませんが、目安となる基準はあった方が良いと思いますので、こちらに書いておきます。
高校受験生に対する距離感を想定しています。
■試験結果
各科目の大まかな点数や偏差値を知っている程度で充分です。
知らなくても問題ありません。結果に口出ししてしまうなら、見ない方がはるかにましです。
実際、まったくご存じない方もいらっしゃいますし、塾に通わせているなら、それで問題はないです。結果そのものではなく、子どもの機嫌や試験に対する関心度合いをざっくりと見るようにしてください。無関心が正解なのではなく、より離れたところから、子どもをみるイメージです。
■学校や塾の提出物
提出物チェックを日常的に親がやっているケースがありますが、細かすぎます。
受験関係書類や夏休みの宿題提出日のように、大切な日に一緒に持ち物チェックをしてあげるくらいの距離感が適切です。内容や仕上がりにまで口出しをしているとすると、それは明らかな過干渉ですので、すぐに止めた方が良いと思います。
■勉強量
「勉強しなさい」、「そろそろ勉強した方がいいんじゃない?」といった声かけをされている時点で、細かすぎます。子どもの勉強量を把握しているからこそ、出てくる言葉だからです。
「今日は朝からゲームばかりして、、」といった声もよくいただくのですが、「今日」という視点で子どもの勉強をみるのではなく、「週単位」、「月単位」くらいで考える必要があります。ウサギ型の子どもに「いま走れ!今日走れ!」と言っても効果はありません。勉強量に口出しをしたくなる時点で、その子はコツコツがんばるカメ型ではなく、ウサギ型である可能性が高いです。
■日々の生活
テレビ、ゲーム、SNS、動画視聴といったことに、どれだけ時間を使っているか、本来は気にする必要はありません。ただ、同じ家で暮らしていて、あまりにもその時間が「長すぎる」と感じられるのであれば違う可能性を疑っていただきたいと思います。それは「依存症」です。これは病気ですから、本人の意志の力では解決できません。「依存症」はなってしまってからでは治すことが難しい病気なので、そうなる前に介入する必要があります。特にスマホは渡す前にルール決めは必須かと思われます(リビングで使う、1日1時間以内、など)。
プラスジムでは中学生のスマホ持込を「原則不可」としてから、成績の伸び方が明らかに変わりました。この時期の子どもに対して、スマホを自由に使わせることだけは止めてあげてください。
■学校や塾での様子
定期的に面談などの機会があると思います。それで充分です。保護者に対して日々の授業報告を丁寧に行っている塾があります。親は喜ぶかもしれませんが、子ども視点で考えると、デメリットの多い施策であると思わざるをえません。そのような枝葉の情報を追うのではなく、もっと「大ざっぱ」にみてください。
夏休み、たくさんの時間を家で過ごすことになる受験生も多いと思います。
親の役割として大切なことは、そんな子どもたちの学習意欲を下げるような関わりをしないこと。
本ブログで再三書いてきていることではありますが、「勉強しなさい」はその最たる行動なので、厳格に慎んでいただきたいと思う次第です。