Vol.269 信者ビジネス
2022年08月09日更新
元首相が銃殺されるという衝撃的な事件から、約1ヵ月。
事件直後は安倍元首相の外交面での功績や各国の反応といった報道が多かったですが、最近は、元統一教会と政治家との関わり、についてのニュースが連日のように流れてきます。
信者から、法外な金額のお金を巻き上げる新興宗教のやり口に多くの国民が驚いています。
宗教に限らず、同じような方法で、非常識な額のお金集めをする会社や人がいます。
塾予備校業界にもいます。
それを私は「信者ビジネス」と言っています。
影響力のある塾長や、塾・予備校講師の言葉には、どこか「カリスマ性」を感じさせる不思議な魅力があるものです。
それは、多くの信者を集める宗教家(教祖)と同じ力です。
同じことをして、人の心をつかんでいます。
なにをしているのかというと、「予言」です。
そのやり方は正しいのか間違っているのか、そのやり方で結果が出るのか出ないのか、多くの生徒は不安を抱えながら、勉強をしています。
不安の何が問題かというと、行動が止まってしまうことです。
その状況を前に進めてあげるための「予言」、それを私は否定しません。
道に迷ってどうすればいいかわからなくなったとき、怖くて前に進むことができなくなったとき、そうした「予言」に救われる場面は誰にでもあると思います。
ただ、我々教師が宗教家と違うのは、その「予言」の根拠です。
私たちは、星占いのようなものではなく、過去の経験やデータから、生徒の未来を「予言」します。
未来のことですから、「100%確実にそうなる」と断言できることは1つもありません。
しかし、「かなり高い確率でそうなる」と断言できることなら、たくさんあります。
そうなるように、あるいは、そうなってしまわないように、生徒をより高い勝率が見込める道へと引っ張っていきます。
この職業におけるリーダーシップとは、そういうものです。
「信者ビジネス」においては、この「予言」が多用されます。
宗教にせよ学習塾にせよ、支払われる金額のどこからが「ぼったくり」で、どこまでが適正かと言うことを金額で示すことはできません。
ただ、明確に言えることがあります。
法外な支払いが起きているとき、被害者は対象への精神的依存状態にあります。
それを利用するのが、「信者ビジネス」です。
多くの場合、精神的依存は、未来への不安から始まります。
自分で選べない、決められない、自分の「決断」に自信がない。
「信者ビジネス」がターゲットにするのは、こうした大人です。
防衛策は、自分に「自信」を持つことしかありません。
将来、悪い大人にだまされないためにも、生徒たちには自分の選択や判断に「自信」を持てる大人に成長してもらいたいと願っています。