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Vol.025 誰にでもできる!子どものやる気を引き出す「聴く技術」その3
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Vol.025 誰にでもできる!子どものやる気を引き出す「聴く技術」その3


2017年10月17日更新


これまでの記事で、中学3年生の夏、子どもが以下のように言い出したらどう返事してあげるのがベストなのか?ということについて書かせていただきました。

「高校に進学しないで働くことにした」
(もちろん子どもには高校に進学してもらいたいと考えています)

感情的な発言への対処には「傾聴のスキル」が有効です。
4段階あるレベルの前回はレベル2まで紹介させていただきました。
今回はその完結編、傾聴のスキルレベル4まで紹介させていただきます。

傾聴レベル3になると、少し難しくなります。
この段階では、「相手の心情を反映」するのです(※)。
つまり、
「かなり悩んでいるみたいだね」
「最近、元気ないなとは思っていたけど」
相手の言葉から心情を察して、その心情を言葉で表現します。
これは傾聴のスキルでも高等技術です。
なぜなら、相手の発言に含まれている感情的な側面を理解しなければならないからです。

そして最終段階、傾聴のレベル4です。
「内容を自分の言葉で言い換えて、心情も反映する」です。
前回記事で紹介させていただいた理想的な返答例です。

「高校よりも就職の方が自分のためになる・・、かなり悩んでいるみたいだね」

なぜこの返答が最適なのか?
実際に傾聴のスキル4を使って、悩み相談に取り組んでみたいと思います。
親と子どもの心の動きに注目してください。

☆子ども
「僕は高校に進学しないで働くことにした」
(またどうせ何か文句言われるんだろうな・・)
★親 
「高校よりも就職する方が自分のためになる・・、かなり悩んでいるみたいだね。」
(これは学校で何かあったな。相当イライラしているぞ。まず話を聴こう)
☆子ども
「勉強なんて意味がないと思って」
(高校がいいとか、就職がいいとかそういう話じゃないんだよね)
★親 
「勉強には意味がない・・何かつらいのかい?」
(そう言えば、実力テスト結果が返却される頃だな。それが悪かったのかもしれないな)
☆子ども 
「実力テスト結果が返ってきたんだけど、近くで進学できる都立高校はないって先生が言うんだ。もし行きたいんだったら、夏休みは毎日8時間勉強しろって。そんなに出来る気がしないし。」
(今日は本音で話しても大丈夫そうだな)
★親
「そんなに勉強出来る気がしないってわけだ」
(なるほど悩みは分かった、実力テストの点数が悪かったことがきっかけか・・)
★親
「でも、実際はそこまで勉強しなくても入れる高校もあるんじゃないかな?」
☆子ども 
「行きたいのはそういう高校じゃないんだ!誰でも合格する高校に進学するくらいなら働いた方がましだよ!」
 (でたでた、とりあえず高校は卒業しとけ論。それはもう聞きあきた。)
★親
「高い目標を持っているからこそ、今の成績が不安なんだ?」
(いけない、いけない。感情的になってきた。もう一度よく話を聴こう)
☆子ども
「そう・・。行きたい高校に合格するためにはあと100点必要なんだって」
★親
 「今回は何点取れたの?」
☆子ども
「五教科で294点。全然ダメだった。」
★親 
「なんだ全然悪い成績じゃないじゃないか!」
(確かに前回よりも大幅に下がったな。でも思ったよりひどくもない)
☆子ども
「悪いよ!だって山田は420点も取ってるし!」
★親 
「100点以上の差がついてしまったんだ。たしかに、それはかなり悔しいね。」
(まだまだ感情的になってるな。今は話を聴く場面だ)
☆子ども
「そうなんだ。前のテスト結果は一緒だったんだよ。勉強だって同じくらいしかしていないはずなのに、納得がいかないんだ。僕は頭が悪いのかなぁ・・」
(そうか・・山田に負けたことが悔しかったのかもしれない)
★親 
「これ以上勉強しても無駄なんじゃないか、と。それで元気がない。」
(何に悩んでいるのかがようやく見えてきた。要するに次のテストで山田君に負けないくらいの点数を取りたいが、そのための勉強に自信がないんだな・・)
☆子ども
「そうかもしれない・・。頑張ってやっても点数が上がる保証もないし」

・・・・・

きりがないのでここまでにします。
どうでしょうか?
ポイントは子どもの「感情」です。相手が感情的に発言をしているときに論理的な説明をしても相手は決してこちらの言葉を受け止めることは出来ません。

例えば、「悪いよ!だって山田は420点も取ってるし!」という場面。
論理的な返答例と、その返答に対する子どもの心の中を見てみましょう。

親「山田君はきっと見えないところで努力をしていたんじゃないかな?」
子ども(それは僕が努力をしていないってこと?こんなに頑張っているのに)
親「成績には波があるから、今回はたまたま山田君の成績が良かったんじゃないかな?」
子ども(僕は、山田は本当に頑張っていたから点数が取れたんだと思う)
親「受験まで時間はある。120点の差なんてすぐに埋まるよ」
子ども(お父さんは勉強がどれだけ大変か分かっているのかな?)

要するに何を言っても無駄なのです。
この段階では話を聴くこと以外に正解はありません。
徹底的に話を聴くと、相手の感情に変化が訪れます。
今度は、論理的なアドバイスを聞きたくなるのです。

どうすれば夏休みに成績を上げることが出来るのか?
他にはどんな進学先があるのか?
お父さんやお母さんは受験のときにどんな苦労をしたのか?
そうしたお話に耳を傾けてくれるのです。
話をして、感情的な反応が返ってきたら、もちろん傾聴に戻らなければなりません。
相手の様子を見ながら、こちらの「伝えたいこと」を小出しにするイメージです。

会話には流れがあります。
実際のところ、その流れを断ち切らないようにしながら、ここで紹介したスキルを使いこなすのはかなり大変です。理想的なイメージだけ頭に入れておいてもらいたいので、具体的には説明させていただきましたが。
ですので、まずは以下二点だけ頭に入れておいてください。
多少の衝突があっても、そこは親子なので全く問題なし。
考えすぎるとテンポが悪くなってしまい、それはそれで相手も気持ちよく話せません。

相手の論理ではなく、感情の理解に努める(=共感する)。
感情的になっている相手に論理的説得や自分の昔話をしない。

ブログタイトルに「誰にでもできる!」と書いたのは、この2点に気をつけながら慎重に対話を進めるだけであれば、本当に誰にでもできるからです。
いままでそれができていなかったのであれば、この手のコミュニケーション場面では相当な改善効果が期待できます。
何より、子どもから進路や成績に関する悩みを相談してくれるようになります。
やる気は感情ですから、相手の感情に働きかけるコミュニケーションが正解です。

全3回と長くなりましたが、親子でより良い対話が始まるきっかけとなれば幸いです。

※)原著では“reflect the feeling”と書かれています。邦訳版『7つの習慣』ではfeelingを「感情」と訳されていますが、「心情(心の中の状態)」とする方が私はしっくりきます。実践してみるとわかりますが、「感情」を反映する言葉を返すというのは難しいです。