Vol.054 生徒の心に火をつける
2024年08月21日更新
An ordinary teacher talks a lot.
A good teacher just explains.
An excellent teacher shows an example.
The best teacher inspires his/her students.
「凡庸な教師は無駄話が多い。
良い教師は簡潔に説明する。
優秀な教師は例示をする。
最高の教師は生徒の心に火をつける。」
という有名な格言があります。
実のところ、誰が言ったか諸説あり真偽不明。
それにも関わらず、この格言が有名なのは、それだけ教師の本質を突いた言葉だからです。
日本語訳は、私の教師観に合わせて行いました。
例えば、3行目の「優秀な講師は例示をする」という部分。
「優秀な教師はやってみせる」と訳されることが多いのですが、それだと「説明する」とのレベル差があまりありません。
勉強の場合、現場で教えるときには「説明する」過程で「やってみせる」ことが大半であり、それならexcellentな教師でなくともやっているのではないかと思うわけです。
goodな教師が意識できておらずexcellentな教師がやっていること、それは「例示」です。
例えば、y=ax+bという一次関数の式について説明するとき、excellentな教師であれば、以下のように説明しようと試みることでしょう。
「浩司くん(仮名)、来月の漢検に向けて今は勉強がんばっているよね?それをこの一次関数の式で表してみるね。bというのはすでに覚えている漢字を表すんだ。aは・・・」
このように、優秀な教師というのは、目の前の生徒が理解しやすく関心を持ちやすい具体的な例は何かということを教える際にいつも考えています。
難しい概念を、生徒の関心レベルに合わせて説明する技術が高いのです。
だから、生徒が勉強に興味関心を持つようになる。
これこそ、goodとexcellentの差であると私は思っています。
ただの例え話なら凡庸な教師でもできますが、相手に合わせた例え話はかなりの高等技術です。
そして、教師にとって最も重要かつ、最も難しい仕事が生徒の心に火をつけること。
生徒が本気になった状態を「火がつく」と言うことがありますが、この「火がつく」という表現は、そうなったときの生徒の様子を表す言葉として本当にぴったりです。
しかし、この「生徒の心に火をつける」というのが教師にとっては難題中の難題。
「仕方ないなぁ・・」といったレベルで勉強させることができるのとは、次元のまったく異なる話です。
「このようにすれば心に火がつく」という科学的手法も残念ながら存在しません。
教師が、どれだけお膳立てを行ってもダメな時期というのもあります。
そういう意味で最高の教師は「風を読む」力に長けています。
風の吹いていないところに、帆を立ててもそこまで大きな推進力は得られないからです。
「外的要因」という風を読み、「ここぞ!」という機を絶対に見逃さない。
大半の生徒にとって、勉強の「追い風」が吹くのが受験期。
その風を活かすも殺すも教師次第という難しい時期ではありますが、火をつけるなら今しかないというくらいに、教師にとっては好機でもあります。
受験生にとっての天王山である夏休みも近づいてきました。
今年は、どれだけの生徒の心に火をつけることができるか、今から楽しみにしています。