Vol.095 尊敬できる大人の存在
2020年07月14日更新
人生をどんどん転落していく子に、ほぼ共通していることがあります。
尊敬できる大人が身近にいないということです。
こうなってしまう要因として、親の育て方も大いに影響をしています。
いまは自分の言うことも比較的素直に聞いてくれている自分の子どもも、いつかそうではなくなってしまうかもしれない、という前提で子育てを考えることが大切です。
すると、一つの方針が見えてきます。
それは子どもが尊敬できる大人をまわりに増やしておくということです。
そのようにすれば、道を外れそうになったとき、親以外の大人が助けてくれるかもしれません。
本人のために親身になってアドバイスをしてくれる大人の存在は貴重ですが、それ以上に大切なことはその大人のアドバイスを本人が聞く価値のあるもの、と認識をしているかどうかです。
子どもがただその大人のことを知っているだけではダメで、尊敬しているかどうかが肝心なのです。
そうした大人との人間関係は、子どもの人生に対してセーフティーネットのように機能します。
尊敬できる大人を増やしてあげるために親にできることは、子どもが関わっている身近な大人の素晴らしい一面をなるべく口に出して語り聞かせてあげることです。
完璧な人間などいませんから、人格的に大いに問題があるような場合を除き、本来の人間関係は相手の良い面をみて付き合うようにすべきです。
良い面をみれば、どんな人にも魅力があり、尊敬に値する一面があることに気づきます。
逆に、悪い面だけを見れば、どんな人だってろくでなしです。
そういう視点を教えてあげることが親の大切な役割だと私は思います。
社会に出てから、温かな人間関係を築けるかどうかは本人の気質の問題もありますが、親からどんな人物眼を受け継いだかも大いに影響しているものではないでしょうか。
1997年より20年以上もの間、経団連という機関が1000社を超える会員企業に対し、「新卒採用に関するアンケート調査」というものを毎年実施されています。
その中に「選考時に重視する要素」という質問項目があるのですが、2003年を除き、常に圧倒的1位となっている項目があります。
それがコミュニケーション能力です。
5つの項目を選べる選択式質問ですが、例えば、2018年の場合だと「コミュニケーション能力」を選択した企業数82.4%に対し、2位の「主体性」は64.3%、3位の「チャレンジ精神」は48.9%、「学業成績」はわずか4.4%。この結果もどうかと思いますが、いかに人と信頼関係を築く力を企業が重視しているかの参考にはなります。
そうした大手一流企業の採用ニーズとは逆に、家族以外の年長者との会話に慣れていない子どもが増えてきています。
まずは身近な大人に対する興味関心を持たせてあげるところから始めてみてください。