Vol.055 2つの時間論
2020年07月14日更新
時間には2種類あります。
「主観の時間」と「客観の時間」です。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいますよね?
それが「主観の時間」。
本人が感じている時間の速度や、本人にとって忙しさの基準となる時間のことです。
その一方、誰にとっても時計で流れる1時間は1時間。
これを「客観の時間」とします。
生徒に「忙しい?」と聞くと、「忙しい!」という答えが返ってくることが多いです。
話を聞くと本当に忙しい場合もありますが、本人が忙しいと思っているだけで、周囲の人間からすると忙しいとは言えない、ということは多々あります。
「忙しい」は、軽々しく口にすべきでない言葉です。
なぜなら、「忙しい」と決めてしまうことによって、「主観の時間」は本当に減ってしまうからです。
例えば、一日につき平均で1時間の自由に使える時間があったとして、それを「1時間もある」とするか、「1時間しかなくて忙しい」とするかは自分で決めることができます。
つまり、残った1時間の長短は、自分の「主観」で決められるということです。
どんなに客観的な視点を持つ人でも、「主観」から逃れることはできません。
「主観の時間」に余裕がなければ、未来のために何かをしようという気は出てこないものです。
学びの本質は「自分の未来のために目の前の時間を使うこと」ですから、「忙しい」と感じている人はいつまでも主体的な学習はできないことになります。
実際、仕事ができる人で「忙しい」が口癖の方って、ほとんどいませんよね。仕事の場合は、「忙しい」と口にすることで、機会損失を生んでしまうという二重のデメリットもありますが。
さて、この「本人だけが忙しいと感じている」問題。
本人は「主観の時間」、本人以外は「客観の時間」を使っていることが理由なのですが、これが親子間や教師生徒間でコミュニケーションギャップが生まれてしまう原因の一つとなります。
このコミュニケーションギャップを埋めるためにはお互いの心構えが必要です。
その心構えとは、
本人の心構え:「客観」的に今の状況を把握するように努めること
親や教師の心構え:相手の「主観の時間」感覚を理解するように努めること
です。
本人が時間を「客観」的に把握するための方法が、「計測と記録」です。
プラスジムでも、学習管理を受講している高校生や都立受験コースの生徒には学習時間の計測を導入していますが、これは生徒に「客観」的に現状を把握させるという狙いがあります。
ただし、注意しなければならない点があります。
「計測と記録」によって、生徒は状況を「客観」視できるようにはなりますが、人が「主観の時間」に依存する存在であるということは変わりません。
どんな工夫をしても、本人が「忙しい」と主観的に思っている限り「忙しい」のです。
この認識が変わらない限り、もっと勉強しようという意欲は出てきません。
ここは大切なところなので、確実にご理解いただきたいところです。
特に多いのが、「客観の時間」だけで話をしてしまい、本人といつまでも話がかみ合わず、「できるできない」の水掛け論になってしまうこと。
そうならないために大切なことは、子どもをよく観察し、話をよく聴き、相手の持っている「主観の時間」感覚の理解に努めること、です。
勉強させるということは、相手の「時間」の使い方に変化を起こすということです。
ぜひ一度、これまでの学習時間の「計測と記録」結果を見ながら、「どうすればもっと良くなるか」について話し合ってみてください※。
(※気づきを与えることが目的なので、結論は押し付けないように注意してください)
その際、本人は「客観」的になる努力を、周囲は相手の「主観の時間」感覚を理解する努力を。
お互いが歩みよることで初めて、共通の土台の上で話し合う(理解し合う)ことができます。