Vol.072 読解力を伸ばすためにできること
2020年07月14日更新
『AIvs教科書が読めない子どもたち』という書籍があります。
良書ですので、教育にご興味のある保護者様はぜひご一読ください。
この本の中に「基礎的読解力」という言葉が出てきます。
「基礎的読解力」について、筆者が説明されている箇所を引用させていただきます。
読解力と言うと、谷崎潤一郎や川端康成の小説や、小林秀雄の評論文を読んで作者が訴えたいことや行間に隠されている本当の意味などを読み取ることという印象を持たれている方も多いと思いますが、私が疑問を抱いたのはそのような意味での読解力ではありません。辞書にあるとおり、文章の意味内容を理解するという、ごく当たり前の意味での読解力です。
『AIvs教科書が読めない子どもたち』 P184より引用
この「基礎的読解力」がある生徒の特長をわかりやすく述べているのが、以下のひと言。
教科書や問題集を「読めばわかる」のですから
『AIvs教科書が読めない子どもたち』 P221より引用
「基礎的読解力」があれば、大半の問題は『解答と解説』で理解できてしまうので、あれもこれも解き方を教えてもらう必要はありません。
子どもたちの、この「基礎的読解力」が危機的状況にあるというのが本書の主張です。
では、この「基礎的読解力」はどのようにすれば身につくのか?
これが読者の最も知りたい点なのですが、残念ながら、この点は明確に述べられていません。
論証できるだけのデータが存在しないためです。
問題文の意味を正しく理解していない。
『解答と解説』を読んで理解するだけの力もない。
このような現象は個別指導塾では日常茶飯事です。
この「読めない」症状は小中学生に限らず、高校生にまで見られます。
つまり、『AIvs教科書が読めない子どもたち』で述べられている「日本の子どもたちの基礎的読解力の欠如問題」は個別指導の現場には昔から存在していた現実的課題なのです。
私は学者ではありませんので、「このようにすれば基礎的読解力が伸びる」という方法を、研究結果を用いて論証することはできません。
しかし、自分が生徒を指導していたときに実践をして、成果を出していた方法であれば共有することはできます。
そんなに難しいことではありません。
生徒にさせていたのは、「読む」を「話す」に、「聞く」を「書く」に変換させる作業です。
生徒が読んだものを、生徒の言葉で説明させる。
講師が話したことを、生徒のノートに書かせる※。
(※話したことを一言一句そのまま書かせるのはダメです)
何の科目を指導しているときでも、そのことを意識して指導するようにします。
言語情報は、基本的に「音声」か「文字」でしか表すことができません。
「文字(書き言葉)」で得た情報を「音声(話し言葉)」にする。
「音声(話し言葉)」で得た情報を「文字(書き言葉)」にする。
そのためには、言葉の意味を理解し、言葉を組み立てなおす必要があります。
この変換作業が、生徒の言語能力の向上に効くことに気づき、意識的に行うようにしていました。
勉強を教えることはなくても、話した内容を書かせたり、読んだ本の内容を聞いてあげたりといったことは普段の会話の中でもできますので、ぜひ取り入れてあげてください。