Vol.126 話を聴けない生徒

Vol.126 話を聴けない生徒



2019年10月29日投稿
2020年07月14日更新



成績が伸びない生徒の多くに共通してみられる悪い特徴があります。
それは人の話をほとんど聴いていないということ。
吉田茂など、多くの政治家や財界人に思想的影響を与えた安岡正篤という人が、以下のような意味の言葉を残しています。

「人は、その聴く態度をみれば、その人物の練れ具合がわかる」

人の話をきちんと聴くというのは、それなりに人生経験が豊富な大人でも難しいものです。
私は、塾講師の初回研修では冒頭にこの言葉を紹介し、話の聴くことの大切さと難しさを教えるようにしていました。
本人たちにその姿勢を身につけてもらいたいという狙いももちろんありますが、それ以上に、「人の話を聴く」という重要な観点を生徒指導に生かしてもらうためです。
どんなに立派な講義でも、生徒がきちんと聴いていなければ成績が伸びることはありません。
一方的な話をする人はどこにでもいますが、他愛のない会話ならともかく、指導業においてそれは致命的です。
しかし、それは珍しいことではまったくないのです。
ノートに宿題をやったかやっていないかは一目瞭然ですが、自分の話をきちんと聴いているかどうかは目に見えません。そのため、コミュニケーションが一方的通行になってしまう先生が出てくるのですね。これは我々の仕事において特に気をつけたい点です。同時に、学校や塾の先生の話を自分の子どもはまともに聴いていないのではないかという疑いはご両親には常に持っていただきたい観点です。

中学生以上の子どもに対して、ご家庭で英語や数学の勉強を教えていただく必要などまったくありません。それは教師の仕事ですから。
そういうことではなく、ご両親には「話を聴く態度」のような社会生活の根幹となる基本的な態度を教えてもらいたいのです。こうしたことがきちんと出来ていないと、英語や数学ができないよりもはるかに困ったことになります。そもそも子どもの成績も、知能が問題なのではなく、人から物事を学べるだけの社会性が育っていないことに原因がある場合がかなり多いのです。

「人の話をきちんと聴く」ということに関して、「ちゃんと聴きなさい!」と言っても効果はほとんど期待できません。なぜなら、それで本人はきちんと聴いているつもりだからです。
きちんと聴くとはどういうことなのか、を具体的な行動として示してあげる必要があります。
ここでは2つ紹介させていただきます。
一つは、大事な話をするときには必ずお互いに手を止めて会話をするようにしてください。お母さんも洗い物をしたりしながら、子どもの真剣な話を聴かないということです(雑談時はOK)。
お母さんは器用ですから、こうした並列処理ができるのですが、特に男の子に、これはまず無理です。悪い見本となってしまうので、まずはお母さんから姿勢を見直すことをおススメします。
ちなみに塾内では大事な話であろうとなかろうと、会話をするときには必ず自分の手を止めるように指導しています。それが他人に対する基本的な礼節である、と考えているのもあります。
もう一つは、大事な話を聴くときには必ずメモを取るように教えておくことです。子どもと一緒に誰かのお話を聴きにいくとなると、学校や塾の先生となることが多いはずですが、このときにメモを取らせるのです。もちろんそこにいらっしゃったお父さん、お母さんもメモを取ってください(笑)

話を聴くのが上手な子どものご両親とお会いすると、必ずご両親もお話を聴くのがお上手です。
面談時には、きちんとこちらの話したことを記録されますし、ご質問もとても的確です。
子どもはそうした親の姿勢から、世の中とどう向き合えばいいかを学びます。
極論すれば、子どもの前だけでもいいですから、しっかりした姿を見せてあげてください。


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