Vol.230 「通い放題」の塾
2021年11月09日更新
各中学校の2学期期末試験が近づいてきました。
プラスジム中学部は今年4月から全学年に「自立学習」を導入しました。
成果は出やすいです。
現状、「成績を伸ばす」ことを最優先に考えるなら、ベストの指導形態かもしれません。
「自立学習」とは、生徒講師間で決めた学習計画に基づく勉強を教室で行う指導形式で、10年くらい前から導入する塾が増えてきました。教室で勉強するため、集中しやすいことや、わからない問題があったときに講師に質問できる、学習内容の軌道修正をすぐに行ってもらえる、といったメリットがあります。小テストを行うこともあります。
「通い放題」のうたい文句があれば、「自立学習」形式である可能性が高いです。
この「通い放題」について、個人的に懸念している点があります。
「通い放題」は生徒が教室に来てたくさん勉強するからこそ意味ある制度です。
ところが、小中学生であれば自ら進んで教室に勉強しにくる生徒ばかりではありません。
そのため、そうした生徒の成績をきちんと伸ばすためには、教室での勉強時間が増えるような積極的な働きかけが不可欠となります。中学生の場合はこれが最も肝心で、そして教室側にとっては最も大変な仕事です。渋る生徒を説得したり、誰が何時から来る約束になっているのかを全員把握しておいて、その時間に来なかったらご家庭に連絡したり・・。
正直、相当な労力がかかります。こうしたことをきちんと行った結果として、勉強時間が増える→成績が伸びる、の好循環の歯車が回り始めます。
ところが「通い放題」と言っているだけで、これをやらない、いいえ、正確にはそれをしたくてもできない塾があるのです。
どういうことか。
プラスジムを事例にして説明させていただくと、プラスジム中学部は2教室の合計坪数が約33坪あります。その坪数に対して65席程度の生徒用勉強スペースがあります。
1坪あたり畳2枚ですから、これでも相当ギリギリ、教室空間を限界まで使っています。
コロナ禍のこともありますし、それ以上の座席確保は現実的ではありません。そのため、中学部の合計生徒数は70名を超えないように制限しています。それでも、定期試験前の座席稼働率は限りなく100%に近くなります。「いつも生徒であふれている」という表現がぴったりな状況ですが、生徒数はそこまで多くないのですね。一人当たりの通塾回数が多いのと滞在時間が長いのです。
真面目に運営すると、「自立学習」型の教室はこのようになります。
ところが、「通い放題」と盛んに広告宣伝を行っている某塾※の「フランチャイズオーナー募集要項」を読むと、以下のように書いてあります。
「15坪程度のテナントで50名~100名程度の指導が可能です」
これには驚きです。
15坪となると、プラスジムの床面積の半分以下、どうやっても座席は30席確保が限界です。
生徒100人で30席を分け合って勉強するのであれば、それは到底「通い放題」とは言えないでしょう。生徒に「毎日教室で勉強しよう!」と積極的に働きかけることなどまず不可能です。
その塾にしてみても、ホームページを見る限りでは多彩な魅力ある塾のようです。
だからこそ私は思うのですが、塾選びされる方に誤解を与えるメッセージの出し方は止めていただきたいなと。強調すべきはそこ(通い放題)ではないだろう、と。
その誤解によって苦しむのは生徒や保護者様ばかりではありません。
どこの学習塾もそうだと信じていますが、現場で働く塾の先生は善良な使命感を持って教室運営されている方が多いものです。だからこそ、上から、このような矛盾したメッセージを発信されると、ものすごく困ることになります。
現場の先生は、おそらく毎日のように「今日は座席がない」と生徒に謝っているはずです。
どこかの広告代理店の入れ知恵かもしれませんが、もう少し真面目にやってもらいたいものです。
※2021年11月現在、久我山近辺にこうした「通い放題」の塾はありません。本記事の主旨は近隣他塾の批評ではなく、業界全体に対しての問題提起です。