Vol.183 不安との戦い
2020年12月08日更新
先日、12月6日(日)は、来年の高校受験生保護者様向け説明会でした。
ご参加下さった皆さまにはこの場を借りてあらためて御礼申し上げます。
ありがとうございました。
説明会は毎年同じ内容でお話させていただいており、毎回、ありがたいことに高い評価をいただいていたのですが、思うところがあり、今回はお話の内容を少し変更させていただきました。
新しい資料も自信をもってお勧めできるものになっています。
来月も開催を予定しておりますので、現中学2生の保護者様はぜひお話だけでも聞きにいらしてください。きっとお役に立てる内容だと思います。
さて、大学受験生も高校受験生も受験がいよいよ近づいてきました。
今年の様子を見ていると、例年まで以上に不安を抱えている生徒が多いように感じています。
その背景にあるのは、コロナ禍という社会不安でしょう。
先行きが見えない現状に大人も相当なストレスを抱えています。
それが世代を超えて伝染し、感受性の強い生徒ほど大きな影響を受けているように見えます。
ある側面では人間としての「強さ」を試されているような毎日。
社会不安が増したときに私が頭に思い浮かべるのは、1945年3月10日の東京です。
もちろん、生まれていませんから想像です。
この日に何があったかというと東京大空襲です。たった1日で100万人以上の罹災者が出たそうですから、想像を絶するような規模の被害であったことがわかります。しかし、後世の人間が不思議に思うのは、そんな状況の中、100万人以上の生活がそこにあったという事実の方ではないでしょうか。
つまり、なにが言いたいのかと言うと、人は生命を脅かされる状況にすら慣れてしまう生き物だということ。もう一つの教訓は、不安に慣れすぎることもまた危険であるということです。
ただし、このときに抱いておくべき不安は、「危機感」という前向きな言葉で表現されるものです。
したがって、次のことが言えます。
人間は、環境変化直後は不安になりすぎる性質があり、同じ状況が長く続くと危機感が不足しがちとなる(麻痺してくる)。
この原則が頭の中にあると、生徒対応の方針が見えてきます。
成長とは変化ですから、強すぎる不安の中で人は前向きに成長することは出来ません。
不安にさらなる不安を重ねることになるからです。
「偏差値が伸びる」といったスキル面の成長は、本人の不安の度合いが適正範囲内におさまっている限りにおいて実現されます。
このバランスが大切ですから、変化の大きな時期には安心感を与えるための働きかけを、変化のない時期には危機感を抱かせるような働きかけをしなければなりません。
しかし、これだけ受験が近づいてくると、塾でも家庭でも安心感を与えるための働きかけに尽力しているにも関わらず、不安の度合いが適正範囲を超えてしまう生徒が出てきます。
人生初の出来事に次々と直面し、本人の対応力が追いつかなくなるのです。
目に見える成長が停滞したその日、前へ進むことを止めるべきなのでしょうか。
もちろん止めるべきではありません。
むしろ、ここからが真の勝負です。
精神を病むレベルまで追い込まれていないのであれば、耐えてがんばった方がいい。
人間的に強くなるチャンスだからです。
ここで一つの考え方を紹介させていただきます。
不安を乗り越える有効な手段の一つは、客観的に状況分析を行い、攻めの姿勢で臨むことです。
主体的に物事に臨むと、不思議なことに不安は消えていきます。
いまの状況を客観視して、前向きになれる魔法の質問があります。
私も困難に直面したときには、この自問自答を行っています。
不安が強すぎると感じたときは、以下のように自分に問いかけてみてください。
「過去の人生で最大の不安を10とした場合、いまの不安を10段階で表すと、どの程度ですか?」
この答えが「10」未満であった場合は次のように考えます。
「あれを乗り越えられたのだから大丈夫、次も必ず上手くやれる!」
では、この答えが人生最大の「10」であった場合、あるいは「8」や「9」だけれども、過去の「10」はもう二度と経験したくないトラウマレベルの体験であったような場合はどうでしょうか。
そのときは次のように考えます。
「今回の不安を乗り越えることに成功したら、これから先の人生、同じレベルの不安は対処できる強い自分になれる!」
どちらにしてもポジティブな結論にいたるので、おススメです。
自問自答してもいいですし、親や教師のような成長支援者が聞いてあげるのも良いでしょう。