
Vol.074 生徒の本気を引き出す魔法
2024年08月21日更新
過去の記事で、勉強が楽しくなるためのヒントを提案させていただきました。
Vol.071 勉強が楽しくなるたった一つの条件
今回は、対話によって生徒の本気を引き出す教師の能力を紹介させていただきます。
話をして、次から次へと魔法にかけたように生徒を本気にしてしまう教師は確かにいます。
カラクリがわからないと魔法のように見えてしまいますが、もちろん魔法ではありません。
この能力の謎を解き明かしていきたいと思います。
少なくとも私はこのようにしています。
個別で本気を引き出すアプローチが得意な教師に、共通して備わっているのが「洞察力」です。
似た言葉に「観察力」がありますが、「洞察力」は「観察力」とは違います。
それぞれを大辞林で調べると、
観察力:物事の状態や変化を客観的に注意深く見ること。
洞察力:物事を観察して、その本質や奥底にあるものを見抜くこと。見通すこと。
となっています。
「洞察力」のある教師にとって観察することは当たり前。
その情報を基にして、相手の「ある部分」を理解しようと努めます。
私の場合、3者面談をしていると、保護者様に「その通りなんです、なんでわかるんですか?」と言われることが多かったのですが、占い師でも何でもありません。
生徒の「ある部分」が見えてきているだけなのです。
「ある部分」とは何か?
それが「行動原理」です。
「行動原理」を辞書(大辞林)で調べると、以下のようにあります。
行動原理:行動の根源的な動機となる本能、欲求、願望、信条、価値観など
相手の「行動原理」を把握すると色々なことがわかるようになります。
予測もつくようになりますから、「そろそろ遅刻をする」とかそういうこともわかります。
そうならないように先手を打つことも出来るようになります。
しかし、何よりも重要な点は、相手の価値観や信条を前提とした提案ができることです。
相手の本質的な願望をきちんと押さえた上での「人生をよりよくするための行動の提案」であれば、生徒だって聞かない理由はないでしょう。
ただ、洞察によって相手の「行動原理」がわかったとしても、その伝え方は意外に難しく、気をつけなければならない点です。
いきなり、「君のことは全部わかっているよ」と言われても気味が悪いですし、そんなことを言われたらむしろ不信感を持ちます。
わかった気になって伝えた内容が、真実と異なっていた場合などはまだましな方で、それが本人が誰にも見せたくないと思っている心の奥に隠してある繊細な部分だったりすると最悪です。
そこで生じた警戒心は、相手との信頼関係における致命傷になりかねません。
相手のことがわかっても、必ずしもそれを伝える必要もないのです。
生徒の「行動原理」に合った行動の提案をどんどん行ってゆけば、次第に「この先生はわかっている」と生徒は思ってくれるようになります。
一般論でも持論でもなく、本人の心の琴線に触れる提案を次々としてくれる先生かどうか。
先生と話をした後、子どもの表情が明るくなっているか。
それが出来ている先生であれば、その先生には「洞察力」がきちんと備わっています。
家庭教師などで良い先生を探されている方は、ぜひそうした観点で見極めてみてください。
■追記
今回の記事は、教師が生徒の本気を引き出す方法論について述べたものです。
他人だから有効なのであって、親子間ではあまりうまくいきません。
ご両親と教師では、子どもにとっての役割が違うからです。
子どもの勉強の本気に関する保護者様向けの記事は以下の記事を参考になさってください。
Vol.073 なぜうちの子は勉強をやる気にならないか