Vol.124 子どもの問題に気づける親になるには
2020年07月14日更新
塾長である私と生徒たちとの会話というのは、いまはあまりありません。
直接的なコミュニケーションをしなくなったのは、世代的に会話がかみ合わずキツイというのもあるのですが(笑)、それをせずとも、普段の様子を観察しているだけで生徒たちの状態をそれなりに把握できるようになったからでもあります。
私の場合、課題のある生徒だけが目に飛びこんでくる感じがします。
非科学的な話ではなく、勘所をおさえて10年以上この仕事をすれば誰でもそうなると思います。
情報が脳にインプットされるに従って、感度や直観力のようなものが育つので。
少ない情報の中から、子どもの危険信号を直観的にキャッチするにはどうすればいいか?
実はちょっとしたコツがあります。
それはその子の「平常モード」の理解に努めることです。
「平常モード」とは、良くも悪くもない通常の状態のことです。
人が「良い」とか「悪い」という表現を使うとき、そこには「比較対象」が暗に存在しています。
何と比べてそれを「良い」と判断するのか「悪い」と判断するのか、その「何と比べて」が実は最も重要なのですが、これを間違えてしまうと正しい物事の判断はできません。
もうおわかりだと思います。
子どもの危険信号をキャッチすることを目的とした観察を行うとき、その判断の「良い」や「悪い」は、あくまでもその子の「平常モード」を基点に比較されるべきなのです。
その子の「平常モード」を理解しておくために、日常的な働きかけや行動観察を行います。
この情報はなるべくたくさん持っておきたい。
例えば、あいさつをして、その反応を見る。
ここで気にしているのは「この子は他の子よりも声が大きい」とかそういうことではなく、あくまでもその子どもにとっての「平常モード」はどこかということです。
それをつかんだら、それを比較対象にして毎日のコンディションの良し悪しをみればいい。
声の大きさやトーン、目が合うかどうかなど、あいさつからだけでもわかることはたくさんあります。
私の場合だと、他にも入室時間や退室時間、授業中の姿勢や講師との会話の様子などをみて総合的に判断をしています。
ご家庭に置きかえると、〇曜日の帰宅時間、就寝時間、起床時間、食欲、言葉数・・、など色々ありますね。
それらすべての「平常モード」を知っておくことが、子どもの問題の早期発見につながります。
異常が反映されやすい行動があるなら、その行動は特に細かく見ておくと良いでしょう。
例えば、嫌なことがあると必ず食欲がなくなる(あるいは増える)、といったように。
表面的な問題を解決することばかりに目を向けてしまい、さらに深刻な問題の発見を見落としてしまうことがないようにしてください。
良い親というのは、子どもの課題解決力のある親ではなく、子どもの課題発見力がある親です。