Vol.155 人生のRTB

Vol.155 人生のRTB



2020年05月26日投稿
2020年05月26日更新



マーティング用語で「RTB」という言葉があります※。
「Reason To Believe」の頭文字。
その商品や広告を「信用する理由」といった意味で用います。
学習塾でたとえると、合格実績や合格体験記や成績アップ者の開示はこれにあたります。
これだけの合格者が出ているのですから素晴らしい塾ですよ、というわけです。
「すごく良い塾です」と口で言うだけなら誰にでもできます。
どうやってそれを信用してもらうかが重要であり、それが「RTB」です。
「働く」ということに関しても、まったく同じ。
学生が企業に新卒採用される。
これを経済の動きとして説明すると、「労働の売買契約が成立した」となります。
学生は、自分の「労働力」を労働市場で売り、企業がそれを買ったのです。
将来「自分という商品を労働市場という名のマーケットで売り出す」というように考えれば、人生においても「RTB」は重要だということがわかります。

企業の採用面接の際には、
粘り強く努力できます、リーダーシップがあります、物事を分析するのが得意です・・
といった学生の主張よりも、採用担当者は「それが本当かどうか」の方が気になるものです。
企業が商品やサービスを売り出す場合とまったく同じで、口だけなら誰にでも言えるからです。
面接で会っただけの良く知らない相手に対して「信頼」も何もあったものではないですから、その学生の積み重ねてきた経験からその言葉が「信用」に値するものかどうかを判断しようとします。
学歴ももちろん「RTB」になります。
「東大卒」であれば、「努力できること」や「学習能力に優れていること」などの証明にはなるでしょう。しかし、「リーダーシップがあること」や、日本企業が採用にあたって最も重視する「コミュニケーション能力があること」の「RTB」にはなりません。
東大生であっても、それらをPRしたいのであれば「RTB」は別の体験で補強する必要があります。
逆に、自分の通っている大学のブランドがあまり強くなかったとしましょう。
その場合も、「RTB」を補うことで就活において「東大卒」と似た印象を狙うことは可能です。
例えば、在学中に難関資格である公認会計士試験に合格するようなことが考えられます。英検1級など、自分の学習能力を証明するだけであれば方法はいくらでも存在します。

最後に重要な点を一つ。
将来の選考を通過するために人生の「RTB」を準備しようとしても、あまり上手くいきません。
なにかをする目的が「選考通過」では、その活動に夢中になるほどは取り組めないからです。
将来、本当に使える強い「RTB」は、「いま」の自分の課題意識の中にあります
もっと英語力を身につけたいとか、人前で上手く話せるようになりたいとか。
不確実な未来よりも、「いま」のためにがんばる方が人は何倍もエネルギーが出ます。
だから「いま」大切だと思うことを、全力でやってみる
1年以内の期間で具体的な目標を立てて、真面目に取り組む。
そしてきちんと振り返りもする。
そうすると、上手くできたこととそうでないことに分かれていくはずです。
振り返りの中で「人前で上手く話せるようになってきたけれど、資料作成が下手すぎる。」のように次なる課題も自然と見えてきます。

まずは、中長期的な人生計画の中で求められる人生の「RTB」についてぼんやりとしたままで構わないので、イメージをしてみること。
その上で「いま」の自分が課題だと感じていることに正直かつ全力で向き合うこと。
そのように生きれば、人生の「RTB」は自然と積み重なっていきます。

※「Real Time Bidding(即時入札)」という別の意味もあり、インターネット広告の世界ではこちらの方が有名です。


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