Vol.268 いまを生きる
2022年08月02日更新
夏期講習が本格的に始まりました。
高校受験生に関しては勉強を本人まかせにせず、生徒全員の学習内容を教室で完全管理する体制をとっていますから、朝から夜まで教室は生徒であふれかえっています。
目標勉強時間は1日10時間。
かなりハードな毎日だとは思いますが、ここ数年、これをこなせなかった生徒はいません。
なぜか。
ひと言で言えば、迷わせないからです。
それに加え、「全員同じようにやっている」という環境も本人の力になるのだと思います。
それが「当たり前の基準」になってしまえば、中学生でも意外にやれるものです。
スポーツの世界に「ゾーンに入る」という表現があります。
集中力が極限まで高まり、他のことを忘れてしまうくらいに目の前の活動に没頭できている状態のことですが、まさにそんな様子の生徒もちらほらいます。
見ているこちらが心配になるくらいの長時間、勉強だけに集中しているのです。
それが、つい最近まで、定期試験前以外は家で勉強したことなどほとんどないような生徒だったりするわけですから、おどろきです。
これまでは何のためにそれをやるのかの意味もわからず、どうやれば正解なのかもわからず、結果につながっている手ごたえを感じることができなかった、、勉強。
それが今は、それをすることによって確実に自分が伸びている実感があり、「高校合格」という先の目標に一歩ずつ近づいている感じがする・・。
「勉強ってこういうことだったのか!」という新鮮な驚きや感動があるのだと思います。
そうした生徒を見ていて感じるのは、「いま」を真剣に生きているということ。
未来でもない、過去でもない。
いま、この瞬間に心が動いている。
約30年前、中学3年生だった私のクラスは、文化祭にて、ある映画を題材に演劇をしました。
題材としたのは、『Dead Poets Society』という1989年のアメリカ映画です。
名優ロビン・ウィリアムズの代表作。彼が演じる型破りな教師(ジョン・キーティング)が、とある名門進学校に赴任し、生徒たちを感化していくという内容の青春ストーリーです。
この作品の邦題が、『いまを生きる』。
最初の授業で、キーティング先生は「いま」を生きることの大切さを生徒に説きます。
それが人生を素晴らしいものにするのだ、と。
大人になり、この映画にこめられたメッセージの意味がようやくわかってきました。
たしかにその通り、輝いている人は例外なく「いま」を全力で生きています。
勉強は未来のための活動ですが、未来がどうなるのかなんて究極的には誰もわからない。
いま、この瞬間に全力で没頭できるなら、それが最高だと思うのです。
そうした時間を過ごせている生徒たちの姿に、私自身、気づかされることがたくさんあります。