Vol.281 成績伸びても、ほめなくていい

Vol.281 成績伸びても、ほめなくていい



2022年11月01日投稿
2022年11月01日更新



「親は子どものことをほめてあげてください。」
どの教育本を読んでも、必ずと言ってよいほど目にするアドバイスです。
しかし、これは正しいのでしょうか。
個人的意見ですが、幼児や小学生相手なら、正しいと考えています。
中学生や高校生相手なら、正しくないと考えています。

「先生はほめ上手ですね!」
すごく良く言われるのですが、実は私に相手をほめているという自覚はほとんどありません。
自覚しているときがあるとすると、おそらくそれは「ほめる」ではなく、「おだてる」になっているように思います。「おだてる」とは、先に相手に何かをさせようという意図があり、そのために相手が嬉しがるようなことを言うことを意味します。
「おだてる」なら言わない方がいいです。
ただ、思春期の子をほめない方が良いと私が思う本当の理由はそこではありません。
例えば、子どもが試験で良い点数を取ってきたとき、いつもよりもたくさん勉強をがんばれたとき、学校や塾の先生から良い報告があったとき、、
親がたくさんたくさんほめたとします。
そのことで、子どもは一時的に良い気分になることでしょう。
しかし、その状況をほめるということは、「その逆は良くない」と暗に示していることになるのです。
そもそも、子どもの成績が常に良いことは正しいことなのでしょうか?
悪い成績からは反省が生まれますし、良質な反省をバネにして人間は成長するものです。
教育的見地から言えば、「良い成績」も「悪い成績」も使い方次第で良い材料にも悪い材料にもなりえるものですし、どちらの経験もあった方が良いです。
良い状態ばかりほめられていると、本人はその逆、つまり失敗を避けたり、隠したりするようになります。親の立場からすると、警戒すべきは悪い情報なのですが、子どもはそういう話はしなくなります。

では、どうすれば良いのかというと「共感」です。
子どもが嬉しそうにしているのであれば一緒に喜んであげる。それだけで充分なのです。
良い点数を取ってきたからお母さんは喜んでいるのではなく、あなたが嬉しそうにしていることが嬉しい。そういう風に気持ちが伝わることが大事なのです。
ちなみに、自分(親)の期待に応えることができている子どもだけを肯定する愛情のかけ方を、不登校支援などを行うカウンセラーは「条件付きの愛」と呼び、否定しています。
「成績が伸びた」という理由でほめるのは、まさにこれではないでしょうか。

教師と生徒との関係性は親子関係とは少し違います。
良い成績を取ってきた場合には、もちろん、ほめる場合もあります。
教師は「成長させること」が役割だからそれで良いのです。
しかし、それに関しても先に書いたようにほめているという自覚は私にはありません。
単に、その事実に驚いたり、感動しているだけなのです。
私が本当にほめ上手だとすると、この感受性が他人よりも強いのだと思います。
たぶん、普通の人が感知しない些細なレベルのことに反応したり、感動している。
なぜ、それができるのかと言われると答えはないのですが、あえて言うなら、相手に対する興味関心が強いからでしょうか。別に見ようと思わずとも、「違い」が勝手に目に飛び込んでくる感覚があります。残念なことに、この興味関心を持つ対象には法則性があり、どう頑張っても年配者に向けられることがありません。「育てる」という観点でしか、相手のことを見ていないからだと思います。
誰に対してもそれが出来れば、天性の人たらしになれたかもしれませんが(笑)
そういう意味で、自分には人を育てる仕事が天職だと思っています。


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