Vol.282 自信がないと始まらない
2022年11月08日更新
「私(ぼく)は自分に自信がないんです」
よく聞く言葉ですが、仮に、これがプロなら一発アウト、失格です。
「自分は仕事ができない人間です」と宣言しているに等しい。
手厳しいですが、私はそう思っています。
「自信」がないとなぜダメなのか。
そもそも、成果というのは、何らかの行動を積み重ねた結果として得られるものです。
例えば、英検2級に合格するために英語を勉強する。
細かく言うと、英単語を覚える、長文を読む、音読をする、文法問題を解く・・
さらに細かく言うと、英単語帳を持ち歩き日本語訳の確認をする・・
そうしたことを週に何時間、どのくらいの頻度で??
独学であれば、こうしたことをすべて自分で決めなければなりませんが、「自信」がない人はまずここから上手くいきません。
自分のやるべきことに確信を持てないのです。
結果的に、何もやらずに先延ばしをするか、言い訳が始まります。
最も典型的な言い訳は、「勉強の仕方がわからない」です。
親が子どもの言うことを真に受けてはいけないのが、この「勉強の仕方がわからない」という言い訳で、子どもは勉強の仕方がわからないのではなく、やるべきことに「自信」がないのです。
こうなると、やることがふらふらとして定まらないため、必要な行動が積み重なりません。
勉強を開始してからも、「自信」がない子は安定しません。
自分の才能はもちろん、自分の行動も信じていないので、新しく得た経験や知識に関しても信じることができず、結果として自分の中にある材料を上手く使いこなすことが出来ないのです。
人間関係に関しても、自分が相手に貢献できているという「自信」がないため、上手く人を頼ることができません。完全依存になるか、まったく頼れないかの両極端になりがちです。
もちろん、本番にも弱いです。
「失敗したらどうしよう?」という恐怖心ばかりが先行しますから、脳がパフォーマンスを発揮できません。このとき脳内をスキャンすると、理性的な思考を担う前頭葉ではなく、大脳辺縁系と呼ばれる感情をつかさどる部位に血流が集中してしまっているようです。「頭がまっしろになる」という表現がありますが、これを言いかえると「前頭葉を上手く使えていない」ということですね。
余談ですが、この状態の相手と話すと、話が論理的でないのですぐにわかります。
仕事をまかされるプロなのに「自信」がないのは致命的ですが、社会に出る前なのであれば「自信」を持てるようになるための努力をすれば、まだまだ間に合います。
成功体験が「自信」の根拠になると思われがちですが、人生で本当に役に立つのは、挫折を乗り越えた体験です。
成功体験にも色々ありますが、努力を伴わない成功体験は才能のなせる業です。才能は先天的な要素ですから、自分ではコントロールができません。それに対し、挫折を自分がもがいて乗り越えた経験は後天的要素であり、この経験値を積めると、「どん底に落ちても、自分はその状況に対処できる」というコントロール可能なことに関する「自信」を持つことができるようになります。
人生を生き抜く上では、この「自信」に値千金の価値があると私は考えています。
■当ブログ内における「自信」という言葉の定義
ここでの「自信」とは「数学は誰にも負けない」とかそういう感情ではありません。
自分のことを大切に思う気持ち、自己肯定感といった類のもので、正確には「自尊心」のことです。「自尊心」を英訳すると、「Self-esteem(セルフエスティーム)」となります。「自尊心」は日本語だと「Pride(プライド)」と解釈されてしまうことが多く、どちらかと言うとネガティブな響きを持った言葉として捉えられることが多いように思います。「Pride(プライド)」という単語にはどこか他者との比較のニュアンスが含まれますが、「Self-esteem(セルフエスティーム)」にそれはありません。あくまでも「自分が自分をどう認識しているか」の問題です。
正確には「自尊心(Self-esteem)」という言葉を使いたいのですが、「自尊心(Pride)」と伝わってしまうと全く異なる意味になってしまうので、「自信」と表現しています。
それとはまた別に「自己効力感」という心理学用語もあります。「自分の可能性を信じる力」という意味の「自信」に近いのは、「自己効力感」です。
心理学の教科書では「自己効力感」は「認知」であると説明されています。
細かい定義に従えば、「自尊心(Self-esteem)」→「感情」と、「自己効力感」→「認知」は別ものなのですが、実務的にこれらを分けて考えることにあまり意味はありません※。
そのため、どちらも「自信」とひとまとめにして使っています。
※あえてそれぞれを分けると、「感情」には主体的意志の入り込む余地や情緒的な不安定さが残りますが、「認知」にはそれがないという点になるかと思います。