Vol.081 指導力とは当たり前をできるようにさせる力
2020年07月14日更新
当たり前のことほど意味を説明するのは難しいものです。
そのため、当たり前のことを指導できる学校や学習塾ほど優秀である、と考えています。
プラスジムでは、生徒たちへの教育と「MUST(できなければならない)」と「WANT(できると望ましい)」で考えていますが、「MUST」の方が意味を問われると返答に困ることになります。
過去の記事で、「MUST」と「WANT」の概念図を紹介させていただきました。
参考記事:Vol.060 伸ばす親はMUSTとWANTで考える
この概念図、上にいくほどに「やらなければならない」理由の説明が容易になります。
例えば、「自習中に私語をしてはいけない」というのは「MUST」の「規則」に分類されますが、これを説明するのは、「なぜスリッパの向きをそろえなければならないか?」を説明するより簡単です。
「WANT」の説明はさらに簡単です。
「英単語30個を来週までの宿題にするからやってくること(MUST)。でも、可能であれば80個覚えてこよう(WANT)。それで試験範囲の英単語はすべて覚えたことになるから。早いうちに終わらせてしまえば、試験一週間前に余裕ができるよね!」
この会話でプラス50個覚えてきた方が自分のためになるというのは誰にでもわかります。
残念な指導者の典型が、生徒への言葉がけがこの「WANT」の提示ばかりの人。
「WANT」はやる理由を言葉にするのも簡単な上に、「MUST」のような強制力がありません。
強制力がないということは、言う側にも言われる側にも心の負担のない言葉なのです。
つまり、「WANT」は誰にでも言える。
会社にもいますよね、「WANT」しか言えないリーダーシップのない上司(笑)
質が悪いのは、言った側に「ちゃんと言った」という職業的達成感が満たされてしまう点です。
理想的なことばかり言って、言ったことに満足してしまうのです。
しかし、心の負担を感じていないということは、生徒はまずやってきません。
これでちゃんと出来るのは、本当に勉強のやる気があるか勉強が好きな生徒だけです。
「頑張ってやってこようねー」と言って言われて、ほとんどやってこないかたまにしかやってこない。
もちろん成績も全く伸びない。
こんなことを繰り返していると、その学習塾からは生徒が離れていきます。
生徒がなんのために塾に通っているのかと言えば、成績を伸ばすためです。もう少し長期的視点で教育を捉えていただいているご家庭でしたら、「子どもの成長のため」となるでしょう。
「成長」の本質は「変化」ですから、子どもの成績、態度、行動のどこにも「変化」も見られないのであれば、そんな学習塾に通う価値はありません。
そのため、勉強嫌いの小中学生相手の教育において「MUST」は避けて通れないのです。
もう一度先程の図を見てください。
説明するのは、下にいくほど難しいのですが、行動の負担も下にいくほど下がります。
「スリッパの向きをそろえる」とか、誰にでもすぐに出来ますからね。
行動の負担が少ない分、言うほうの心の負担も少ないです。
ですから、「しつけ」は大切なのです。
ここが「MUST」の指導の出発点となるからです。
最も簡単なことから、生活の中に一定の規律を打ち立てさせていくこと。
「あいさつ」「スリッパをそろえる」「椅子をひく」のように、誰にでもできて、それをすることで損になることはまず考えられない行動から、子どもが当たり前にできることを増やしていく。
それが出来るようになったら「宿題を忘れない」のように当たり前の基準を少し引き上げる。
ここに関しては、何度も何度も何度も何度も・・・言って、とにかくやらせきる。
子どもの教育はここに始まってここに終わると言っても過言ではありません。