Vol.138 子どもが焦ると親は安心する
2020年07月14日更新
この時期、「受験が近いにも関わらず、子どもが焦っていないことが不安」とおっしゃられる保護者様が必ずいらっしゃいます。
受験直前期、子どもは家で焦っていることが正解なのでしょうか?
焦ることでどんなメリットがあるのでしょうか?
たくさん勉強するようになるのでしょうか?
もっと言えば、そうした精神状態で勉強して成績は伸びるのでしょうか?
むしろ、この時期に家でリラックスできていること自体は良いことであると私は考えます。
親の危機感>子どもの危機感、となるのは当たり前です。
受験することの意味を大人はすでに体験レベルで知っているからです。
努力して勝ち取った合格の喜びや、あと一歩がんばり切れなかった自分自身に対する悔しさを。
大人であれば、誰でもそうしたたくさんの感情を抱えて生きています。
本来は、そんな自分と同じだけの危機感を子どもに求めること自体が無理なお話なのですが、頭ではわかっていても、そのように自分を納得させるのは至難の業。
背景にある心理はこの不安を誰か(この場合、子ども)と共有して、安心したいという気持ちです。
お気持ちは良くわかります。
リビングでソファーに座って、テレビを観ている姿を見ていると、「そんなことをしていて本当にいいの?」と不安が募ってしまうのは当然の親心でしょう。
しかし、そこで一歩踏みとどまって、子どもの立場になって考えてあげてください。
リビングでテレビを観るでも何でもいいのですが、家の中でリラックスできないのであれば、子どもたちはどこで受験勉強や人間関係のストレスを解消すれば良いのでしょうか?
まず考えられるのは、自分の部屋に籠城し、不愉快なコミュニケーションを遮断することです。
あるいは、学校帰りや塾帰りに友達と一緒にどこかに消えてしまうことかもしれません。
自分の息子や娘はまだそうなっていないだけで、そうなってしまってから猛烈に後悔されているご両親はとても多いものです。こうなってしまうと、子どもが大人になるのを待つか、外部の専門家の手を借りなければ親子間の信頼関係の回復は難しいです。
思春期の子育ては、そうしたリスクといつも背中合わせです。
特に受験直前期は、子どもも相当なストレスを抱えていますから、そのストレスを逃がしてあげるという発想が本当に本当に大事。
そのストレスが親の目には見えないだけなのです。
前回記事にも書きましたが、この時期にもなればマイペースはむしろ武器になります。
仮に何らかの方法で子どもを焦らせて、いくらかの勉強時間を増やすことよりも、精神的に落ち着いた状態を維持させる方が本番の点数はおそらく良くなります。
じっと見守っていてあげてください。
いつか、きっとその子にも親の気持ちがわかる日がやってきますから。