Vol.047 ラーメン屋と学習塾は何が違うのか

Vol.047 ラーメン屋と学習塾は何が違うのか



2018年03月27日投稿
2020年07月14日更新



先週、「天丼屋と学習塾は何が違うのか」という記事を書かせていただきました。
この話を教えてくれた知人に(大手学習塾で働いています)、ブログで記事にさせてもらったことを報告すると、今度は元ラーメン屋の塾経営者のぼやきを教えてくれました。
これは記事にしないわけにはいかないだろうということで、書かせていただきます。
別に天丼もラーメンも変わらないのですが、お話の内容は違いますので・・。
このシリーズ、今回で最後にします(笑)

知人の話によると、その元ラーメン屋さんは以下のようにおっしゃっていたそうです。
「ラーメン屋のプライドというのは、何百杯同じラーメンを作っても全く同じ味のラーメンを提供し続けることだ。個別指導塾であっても、一人ひとりに提供される授業の質が異なることがあってはならないように思う。塾経営は難しい。」
少々余談をはさみます。
明光義塾、スクールIE、ドクター関塾、ITTO個別指導学院・・
日本にはたくさんの個別指導塾がありますが、多くの個別指導塾はすべての教室が本部直営で運営されているわけではなく、塾経営をやってみたい法人や個人を募集し、塾経営のノウハウを教え、教室を増やすという方針を取っておられます。
これをフランチャイズビジネスと言います。
個人の独立開業を応援する「アントレnet」というサイトがあります。
このサイトで「業種から探す」→「塾・スクール」と検索すると、多くの塾の裏側がわかります。
是非はおいておき、ほぼ全ての学習塾で「未経験OK!」を強くPRしていますね。
そのため、フランチャイズチェーンの学習塾というのは本当に様々なバックグラウンドを持った方がオーナー兼塾長になっているという実態があります。
今回はこのラーメン屋さんの言葉について考えてみます。

誤解を恐れずに言えば、私は授業の質を全くの均一なものにする必要はないと思っています。
講師の手による学習指導は、芸術作品のような側面があります。
例えるなら、音楽家が創造する楽曲や演奏のようなものです。
どんなジャンルであれ、音楽家の表現する作品にはその人なりの人生観などが現れるものですが、学習指導も全く同じで、その人なりの人生観がそこに出てきます。
人に聴かせるための音楽を演奏しようと思えば、リズムや音程といった土台となる基礎技術が必要となるように、学習指導においても基礎技術は必要です。
こればかりは一朝一夕では身につかない。
学習指導におけるこの「基礎技術」の最たるものが「学力」です。
一説には、指導側は指導される側の10倍の学力が必要と言われます。ここを甘く見ている個別指導塾が多いのですが、やはり「学力」なくして良い指導はないと私は考えます。
教える対象が、勉強得意な生徒であっても苦手な生徒であっても変わりません。
勉強苦手な生徒のための塾だから、講師が勉強苦手であって良いという理屈は通用しないということです。これを言うと、「勉強できる人には勉強できない子の気持ちがわからないのでは?」とご心配いただくことがあるのですが、そんなことはないと断言します。
これについては過去に記事にしましたので、そちらをご参照ください。

成績が良かった人って勉強苦手な子の気持ちがわからないのではないですか

しかし、土台(基礎技術)の上に何を乗せるのかは、人によって「違い」が出て当然です。
細かいことを言えば、身体の大きさも、声の質も、趣味も、育ってきた家庭環境も、すべて違うのですから、全く同じものになるはずがないのです。
塾長という仕事を例えると、クラブDJのようなものかなという気もします。
音楽でも、明るい曲を聴きたいときや悲しい曲を聴きたいときがあるように、そのときの状況によって誰の学習指導がその生徒にとってベストな選択なのかは異なってきます。
受け手側の状況が一様ではないのですから、提供するこちら側としては同じものばかりを提供し続けるのではなく、その時々の状況に合わせてベストな人材配置を行えることが理想的です。
言葉で言うのは簡単でも、これを実現するのは相当な難題です。
生徒側と講師側の背景の深い理解が必要ですから。
そのため、この仕事だけはごく限られた人間しか行うことができません。開校から4年目までは塾長である私が行っていましたが、昨年からは共同創業者である神宮が行っています。
芸術の領域と言っていいくらいに難しくて、奥が深い仕事です。

日進月歩で人工知能(AI)技術が進歩しています。
「人間だからできることはなにか?」を突き詰めて考えなければ、スマホで授業を受けるのも学習塾で授業を受けるのも全く変わらなくなってしまう時代がもう目の前まで来ています。
人間は人間によってしか変えられないと私は思っていますし、プラスジムは人間同士の起こす化学反応によって、生徒に変化(=成長)を促すことを目的とした学習塾です。
そのため、冒頭のラーメン屋さんのように考える必要もないと考えています。


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