Vol.117 9月1日
2020年07月14日更新
2015年に厚生労働省がとりまとめた『自殺対策白書』で、あるデータが示されました。
1972年から2013年までの18歳以下の自殺者を日別にまとめると、9月1日が131人で最多となります。文科省からも問題提起があったこともあり、「9月1日問題」として教育関係者の間でもこの事実は広く知られることになりました。
自殺というのは最悪の結末ですが、長い間、学習塾で働いている先生であれば、長期休み明けの子どもたちの様子が「いつもと違う」ことは認識されているように思います。
「気分が沈みやすい時期」であるという点においては、どの生徒にとっても同じなのです。感情の浮き沈みが激しいタイプの生徒ほど、その傾向はわかりやすくあらわれます。
塾の場合、夏休み明けの1週目は、宿題忘れや遅刻や突然のお休みが目に見えて多くなります。
余談ですが、環境変化への対応という意味では中学1年生の4月と5月も子どもたちが不安定になりやすい時期なので要注意です。データがないのでわかりませんが、中学1年生にとっての「最悪の1日」は5月6日なのではないかと、個人的には推測しています。
基本的方針は「長期休みだからと言って生活リズムを変えない」ことなのですが、困ったことに精神的に不安定な生徒ほど、生活リズムが乱れやすい傾向があるように思います。
9月1日に向けて今から出来る対策としては、始業式の1週間前からでも良いので生活リズムを学校に通っている期間と同じように戻しておくことです。
それだけでも、9月1日ショックを多少は和らげることができます。
他にも特に気をつけたい生徒がいます。
夏期講習に一生懸命に通い、初めてこんなに勉強をがんばった高校受験生です。
プラスジムの中学3年生は大半が当てはまるのですが、上手くいったからこそ、かなり気をつける必要がある生徒たちです。
短期間で組み立てた良い習慣は崩れるのも早いものです。この夏につくった良い習慣を本当に自分のモノにするためには、まだまだここから最低半年はがんばらなければなりません。
「ここががんばりどころ」であることを正しく認識し、そのつもりで憂鬱に立ち向かう。定期試験や模試のための「がんばり」とはまた違う性質の戦いが待っています。
人間は不意にやってくる攻撃には耐えられませんが、攻撃がくることが事前にわかっていればそれなりの対策はできるものです。
何事も積み上げることには時間がかかり、崩れるのは一瞬。
夏期講習をがんばった高校受験生にとって、もう一つの山場とも言える時期です。
周囲の大人にとって最も大切なことは、9月1日問題を知っておくことです。
どういうかたちでそれが現れるかは、子どもによって様々ですから、この時期は要注意なのだとあらかじめ認識したうえで臨機応変な対応を心がけてあげてください。