Vol.116 同じ話を何度してもいい
2020年07月14日更新
子どもに大切なことを伝えたいと思ったら、何度も同じ話をしていいと考えています。
お父さん、お母さん、あるいは恩師・・、誰でもいいのですが、大切な「教え」を伝えてくれた人を思い出すとき、きっとその人は何度も同じ話をあなたにしていたはずなのです。
ただし、繰り返して伝えるのに適しているのは、普遍化されたお話です。
「普遍化」の意味は以下のようになります。
普遍化
個別的・特殊なものを捨て、共通なものを取り出すことによって概念や法則などを引き出すこと。
三省堂 大辞林より
わかりやすいのは「若いときの苦労は買ってでもせよ」とか、いわゆる格言ですね。
なにやら難しいという方は以下のように考えてください。
具体的な話、たとえば「出来事の共有」は何度も話すテーマにはあまり適さないということです。「昨日、こんなことがあってねー」といったお話ですね。
繰り返して話してはならないお話もあります。
「(すぐに)相手に何かをさせたい」という目的を持って、その話を持ち出す場合です。たとえば、受験勉強をさせるために「頑張ることの大事さ」を諭すような場合がそれに当てはまります。
行動変化を期待する話は聞く側からすると、負担が大きいものです。
こうした話をしつこく繰り返すと、大人の話を聞かない子どもに育ってしまうので気をつけてください。「わかった、わかった。もううんざり。」と耳をふさがれてしまいます。
あと、本人を否定する言葉を何度も言うのもNGです。
「なんでそんなにだらしないの?」と言いたくなっても、そこはぐっとこらえてください。
生活態度は言葉ではなく行動で整える(=しつけ)、が原則。
私の教え子は、私から何度も同じ話を聞くことになります。
誰に何の話をしたのかを忘れてしまっていることもあるのですが(笑)、あえて同じ話を何度もしていることの方が多いです。
理由の一つは「タイミング」の問題。こちらの言葉がそのときに本人の抱えている問題意識にぴったり合うといいのですが、合っていないと「言葉の意味はわかっても、腹落ちしない」現象が起きます。問題意識は本人の体験レベルが低いと生まれません。リーダーシップ経験を求められたことのない人にリーダーシップの話をしてもピンとこないという意味です。体験レベルが閾値※に達したタイミングで話を聞くと、「なるほど、そういうことか!」となります。
適切なタイミングは話す側にはわからないことも多いので、何度も同じ話をすることにより、ぴったり合うタイミングに言葉を届けられる可能性を高めています。
伝わらないなら話す意味もないかというと、実はそういうわけでもありません。
それが次の理由になります。
事前に聞いた話を何らかのかたちで記憶か記録に残しておくと、体験レベルが閾値に達したときにすぐにその言葉の本質的な意味を悟ることができます。だから、私は自分が教えたことをメモというかたちで残しておくことをスタッフには教えています。親子の場合、それはできませんから、やはり何度も繰り返して話を聞かせ、時期がきたときに「お父さん(お母さん)が言っていたのはこういう意味か!」と気づかせるという方針を取ることになります。
ですから、親として伝えたい本当に大事なことは、そのときに思い出せるレベルまで話して聞かせておく必要がありますね。
※「閾値(いきち)」 ・・・ある反応を起こさせる、最低の刺激量