
Vol.137 この時期、女子が男子に抜かされてしまう理由
2020年07月14日更新
女子がどんどん男子に追い抜かれてしまう。
直前期の受験生の偏差値でよく見られる光景です。
前提として、性差による特徴の違いを私は否定しません。男性には男性の良いところが、女性には女性の良いところがあると考えています。平均身長は男性の方が高いですが、男性よりも身長の高い女性がいるのと同じように、男性らしい女性も、女性らしい男性もいます。
あくまでも「傾向」としてのお話です。
そして、その「傾向」の違いは、例えば都立高校受験にも明確に出ます。同じ高校を志望する受験生同士だと女子の方が、中学校時の内申点平均が高いですよね。
こうした「違い」から、なぜ後半戦の男女の偏差値逆転現象が起きてしまうのかを考察します。
「女子の方が全体的に中学時の内申点は高い傾向にある」と述べましたが、女子の方が、内申点が高くなる傾向にあることと受験直前期の逆転現象は同じ原因から起きています。
つまり、内申点を取る時点では「強み」となっていた女子の特性が受験直前期には「弱み」となってしまうということです。
これはいったいどういう特性なのでしょうか?
受験直前期、特に悪影響を及ぼすものは以下の3つです。
1:心配性
2:視野が広い
3:共感力が高い
「心配性」だからこそ責任感が強かったり計画性があったりしますし、視野の広さや共感力のメリットは述べるまでもないかと思います。
ところが受験直前期には、この1と2の特性が組み合わさって一つの問題を生み、1と3によって別の問題を生みます。
まとめると以下のようになります。
1と2の特性が生む問題・・・学習内容の取り散らかし
1と3の特性が生む問題・・・不安の感染
まず、受験直前期の勉強の鉄則は「わからない問題を解けるようにすること」ではありません。
そうではなく、自分がすでにできている問題を何度も演習し、本番の得点力を高めることです。
大半の生徒には「わかるとできるは違うレベルのものである」という認識がありません。
「できる」ようになるためには「わかる」問題の演習を何度も繰り返し、確実に自分のものとする必要があります。この時期、生真面目な女子はすでにわかっている問題ではなく、自分が解き方をわからない問題を次から次へと発見し、それを何とかしようとし始めます。
「視野が広い」のです。
あっちの問題に手をつけ、こっちの問題に手をつけ・・。
学習内容の取り散らかしとも言っていいような状態が見られると黄色信号です。
そもそも、わからない問題というのは、その難易度の高さも含めて生徒本人には得体のしれないもの。受験直前期まで解けないままで残っていた時点で、いまのその生徒のレベルでは手をつけてはいけない問題である可能性も高いのですが、そんなことはいざ知らず、「わからない」ことが不安な女子生徒はこの問題をなんとかわかるようにしようと何度もチャレンジを試みます。
解説を何度も読んだり、先生に教えてもらうことで、本人はわかったようなわからないような・・。
当然、中途半端な理解レベルでは試験本番で同じ問題と直面してもまず解くことはできません。
勉強時間も無駄になりますし、何より深刻な問題は自信喪失することです。
こうした悪循環に本人自ら気づき修正するというのは至難の業です。
この「自信喪失ループ」を、誰かが止めてあげる必要があります。
さらに、そこに「不安の感染」が加わります。
高校受験生だと多くの場合、まわりにいるのは漠然とした不安を持つ同級生ばかり。
初めてのことに挑戦するわけですから、それも仕方がないのですが、本人たちの主観に基づいた様々な怪情報が飛び交います。
このようにして、不安がさらなる不安を生み、この時期の女子生徒の抱えるストレスはもう大変なことになります。生徒によっては「すべての問題が解けないような気持ちになっている」と言っても過言ではないでしょう。
当然、こうした状態では試験で高いパフォーマンスを期待することは難しいです。
最後にこの問題の解決策を書きます。
まずはここまでに書いた自信喪失ループのメカニズムを理解してください。
その上で、
・「わかる」ではなく、確実に「できる」ようになることを学習の目的とする
・わからない問題があっても自分を責めない
・不安になるような話をわざわざ友人としない、聞かない
(必要とあらば友人とは距離をおいてください)
・経験豊富な人に相談すること、相談相手を間違えないこと
といったようなことを大切にしてもらうと良いかと思います。
その生徒の成長支援者は質問してきた問題の解き方をむやみやたらと教えることではなく、話をたくさん聴いて不安を鎮めてあげることや「適切な学習内容への方向づけ」に時間を使うようにしてあげてもらうことが望ましいです。
「合格できる力はあるから大丈夫」と何度も何度も伝えてあげてください。