
Vol.163 ジョハリの窓
2020年07月21日更新
心理学を学んでいたときに「ジョハリの窓」という考え方の枠組みを知りました。
自己理解について、以下の図の4つの視点から考えましょうというものです。
誰でもこの4つの領域を抱えて生きています。
例えば、「裸の王様」という比喩は右上の「盲点の窓」を示す言葉です。あるいは突然誰かが自殺し「まさかあの人が・・」といったような言葉で語られるとき、その人は「秘密の窓」に何らかの闇を抱えていたことになります。わかりやすいのでネガティブな比喩を使ってしまいましたが、それぞれの窓の中にポジティブな一面が隠されている場合も、もちろんあります。
「開放の窓」の領域が広ければ、お互いのコミュニケーションが行いやすくなります。
自分の本音を吐き出す場がなくて苦しんだ経験や、それと知らずに他人の地雷を踏んでしまって人間関係が危うくなった経験は誰にでもあるのではないかと思います。
では、具体的にこの「開放の窓」の領域をどうひろげるのかについてみていきます。
近年、職場の働きやすさの指標として「心理的安全性」という言葉がよく見られるようになりました。「心理的安全性」が担保されることのメリットは、「秘密の窓」の領域がせまくなることです。
逆に言うと、安心できる場だと人は自己開示がしやすくなって「開放の窓」が広くなるのです。
つまり、「開放の窓」を図でいう下側の領域に広げるためのキーワードは「安心感」ということです。
今後は右側に広げるための方法についてです。
こちらは解決策を先に述べてしまいますが、「他人から適切なフィードバックを得ること」になります。他人からフィードバックを得ることを嫌がる人がいますが、「裸の王様」状態になる危険性があり、あまり良いことではありません。自分にとって耳の痛い指摘ほど、他人にとっての真実であることが多く、それを知らないままでいる姿は他人からするとどこか滑稽なものです。その人の社会的地位や年齢にもよりますが、基本的にそれらが高くなるほどにフィードバックを得る機会は減ります。
だから、比喩が「王様」なのですね。
良い指導とは、相手の「開放の窓」を広げることのできる指導です。
「秘密の窓」を開くためには安心感のベースとなる信頼関係づくり、つまりはコミュニケーションが欠かせません。
そして、「盲点の窓」の言語化。
ここでの注意点は、短所を伝えること以上に、相手の気づいていない長所を伝えることが重要であるということです。短所を伝えるにしても、長所と短所は対になっていることが多いので、長所の側面から伝えるように工夫すると相手も聴き入れやすくなることでしょう。
究極は、授業の中で生徒の「未知の窓」がどんどん開かれていく指導です。
安心感の中で、誰にも見せたことのない自分を表現することができ、またその自分の姿について自分には気づかなかった視点からフィードバックを得る。
隠されていた自分の魅力を発見する瞬間であり、こんなに楽しい授業はありません。