Vol.184 2つのパラダイム
2020年12月15日更新
中学生も高校生も、場合によっては小学生も。
大半の生徒(児童)は、学力評価に関して2つの「パラダイム」を経験することになります。
「パラダイム」とは、以下のように説明されます。
パラダイムとは、ルールと規範であり(成文化されている必要はない)、①境界線を明確にし、②成功するために、境界内でどう行動すれば良いかを教えてくれるものである。
『パラダイムの魔力(ジョエル・パーカー)』P39より抜粋
そして、この転換が起きることを「パラダイムシフト」と言います。
たとえでよく用いられるのは、天動説から地動説への人々の認識の転換ですね。
「パラダイムシフト」が起きると、場合によっては、これまでの常識がまったく通用しなくなります。
過去の正解が不正解になり、過去の不正解が正解になる、といったことが起こり得ます。
上記書籍よりさらに引用します。
つまりパラダイムシフトとは、新しいゲームに移行すること、ゲームのルールがすっかり変わってしまうことである。
そんな転換が在学期間中に起こっているのです。
そして、この認識の転換の乗り遅れは、そのまま受験の失敗へとつながっていきます。
ゲームのルールが変わっているにも関わらず、過去のルール基準で行動しているのですから当然です。新しいゲームに勝つためには新しい認識で行動を開始する必要があるのです。
仮に、在学期間中の2つの「パラダイム」それぞれにネーミングするとすれば、「通知表パラダイム」と「受験パラダイム」となります。前者のパラダイムの評価基準は「授業態度」や「定期試験」や「提出物」であり、後者のパラダイムの評価基準は「偏差値」です。
これらをひとくくりにして、「学力」と考えてしまうところから受験の失敗は始まります。
しかし、実際にはこれら2つを完全に分けて考えることを難しくしてしまう事情もあります。
受験期はこれら2つのパラダイムが混在しているのです。
具体例で説明させていただきます。
都立豊多摩高校にどうしても合格したい大和くん(仮名)。
模試の5科偏差値は66と高い数字を出していますが、内申点が5科17、4科13と豊多摩高校を目指すには少し不安の残る結果です。
彼の幼なじみで親友の翼くんは日大鶴ケ丘高校を目指しています。母親同士とても仲が良く、頻繁に情報交換もしているようです。翼くんにとっての勝負は3年生2学期の通知表結果。通知表結果の合計が高校の指定する基準を満たせるかどうかで合否が決まります。
こうした中、豊多摩高校を目指す大和くんは少し困った状況におかれています。
学校の先生と母親の認識が「通知表パラダイム」のままなのです。
模試結果を知らない学校の先生は「豊多摩はこの成績ではムリ」と断定的に言います。家に帰ると模試結果はほとんど評価されず、定期試験結果のことばかりを叱られます。そもそも模試結果にはあまり興味がないようにも見えます。親友の翼くんは定期試験前こそ必死に勉強しているようですが、2学期にも関わらず日曜日はサッカーの練習に行っていると言います。
一方の大和くんは週末の日曜日は塾で開催される模試の受験・・。
この模試って本当に受験する意味あるのかな??とモヤモヤしています。
こうした高校受験生はめずらしくありません。
特に、初の受験でご両親にも一般入試の経験がない場合、「受験パラダイム」への意識の切り替えは難しくなります。なぜなら、自分も子どももずっと「通知表パラダイム」で生きてきたからです。
長年かけて染みついた世界の見え方はそう簡単に変わりません。
人によっては、学校の成績が悪いと脊髄反射レベルで落胆されてしまうことに・・。
しかし、「受験パラダイム」の最重要指標は通知表ではないのですから、必ずしも落ち込む必要はないのです。
通知表を無視していいとは言いませんが、意識の配分は偏差値に比重をおくべき。
では、どの程度??
これに関しては、はっきりとした答えがあります。
大学一般入試であれば、偏差値99%。
都立高校一般入試であれば、偏差値70%通知表30%です※。
それが、これから戦おうとしているゲーム(一般入試)のルールだからです。
実は、「パラダイムシフト」はこれまで不利な立場にいた人間にとっては大チャンスです。
いち早く、その変化をとらえることに成功すれば、立場をひっくり返すことも充分可能だからです。
これまでと同じパラダイムで戦う限り、先行してポイントを稼いでいる人間の方が有利ですから、その優位性はそう簡単に崩れません。
しかし、そのゲームのルールがどこかで大きく変わるなら・・??
平均偏差値を10伸ばす「都立受験コース」はまさにこの寸隙を突いた逆転の戦略を採用しています。
※公立高校入試制度は、各都道府県によって異なりますので気を付けてください。