Vol.206 人を信頼する力

Vol.206 人を信頼する力



2021年05月25日投稿
2021年05月25日更新



特に思春期以降、親の「人を信頼する力」の有無が子どもの成長に影響を与えるようになります。
前提となる状況を、わかりやすく馬の母子関係にたとえてみます。

小学校以前
母親の半径数メートルの範囲でケアされている状態

小学校
柵の中で自由に走り回っているが、母親の目が届く範囲で行動している

中学校
柵の中にいるが、場所によっては母親からは見えなくなる

高校
柵の外にも出ていくが、食事などのために決められた時間には戻ってくる

成長するにしたがって、子どもの行動範囲は次第にひろがっていくことが普通です。
親の目が届く範囲だけで行動させようとすると、子どもの生きる世界はせまくなってしまいます。
体験できることの選択肢が大幅に制限され、多様な価値観に触れることも出来なくなります。

いずれにせよ、どこかのタイミングで親の目は完全には届かなくなります。
上記比喩では、小学校と中学校がその分岐点。
こちらからは見えない本人まかせの領域が増えると、当然のことながら親の不安も増します。
ここで問われるのが、親の「人を信頼する力」。
学校や塾の先生が、親の側からみて死角側の監視役となることがあります。クラブチームのコーチや地域のボランティア活動の責任者の方がそうした役割を担うこともあるでしょう。そうした場合、大人の監視の目を届かせつつ、子どもの行動範囲をひろげてあげることができるようになります。
子ども本人と親との関係性においてもそうですし、こうした子ども周辺の大人と親との関係性においてもそうなのですが、親に「人を信頼する力」がないと、親がすべての状況を監視しなくてはならなくなります。そうすると先に述べた状態、つまり、「子どもの生きる世界がせまくなる」現象が起きます。子どもの視野は広がらず、新しい学びを吸収させることも難しくなるのです。

人を「信頼」することが苦手な人の特徴の一つに、視点が細かすぎることが挙げられます。
相手に「完全」を求めると、誰のことも「信頼」できなくなります。
子どもが100%自分の思い通りになる、という状況の方が異常です。行動範囲がひろがれば親の思い通りにならないことは出てきて当然。その「小さなこと」が許せないために、信頼関係というもっと大切なものを損なってしまっては本末転倒ではないでしょうか。
枝葉にとらわれると、本質的なところで大間違いを犯しかねません。「木を見て森を見ず」にならないよう、子どもの行動範囲の拡大に応じて、より俯瞰的な視点に移行していく意識が大切です。
余談ですが、「人を信頼する力」が弱いと将来の仕事にも悪影響が出てきます。「人にまかせる」ということができないために、すべてを自分が抱え込むことになるからです。
多くの場合、親の人間観を子どもは受け継ぎます。
人を信頼することの尊さを、ぜひご自身の背中で示してあげてください。


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