Vol.228 最適解よりも納得解

Vol.228 最適解よりも納得解



2021年10月26日投稿
2021年10月26日更新



宿題は多い方が良いのか、少ない方が良いのか。
指導は厳しくすべきなのか、やさしくすべきなのか。
こうした問いに「正解」があるわけではありませんよね。
そもそも、試験のように決められた解答がない問題に対して「正解」を出すことは不可能です。
そこにあるのは「最適解」だけ。
多くの場合、物事の中間に「最適解」はあります。
そして、それがどこにあるかを決めるのが「前提条件」です。

先日、「どうすれば勉強するようになるのか」という記事でも書きましたが、勉強させるための最も効果的な働きかけは、「やること」と「やり方」を相手に具体的に示すことです。
それに成功すれば、大半の生徒の勉強の歯車は上手くまわり始めます。
しかし、たったそれだけの単純なことがとても難しい。
特に難しいのが「やること」の提示です。
その実現には指導者側に「最適解」を発見する力が求められるからです。
主に2つの観点から「最適解」の見極めが必要です。
ひとつは「量」、もう一つが「難易度」です。
例えば、サッカークラブチームに所属している康彦くんと、塾以外の習い事は何もない義孝くん。
この2人の宿題の「量」は同じで良いでしょうか?
あるいは、直観的理解に優れていて学校の授業はまず問題ない葵ちゃんと、他人の話を理解することが少し苦手な七海ちゃん。教材の「難易度」は同じで良いのでしょうか?
このように生徒によって「前提条件」が異なるため、「最適解」も生徒によって変わります。
これを完璧に合わせきることは現実の運用においてはほぼ不可能だと考えています。
そんな中、教育AIがやろうとしているのは、まさにこの部分の最適化なのですが、教育AIだけで上手くいっているという事例は聞いたことがありません。こうしたことを行うのであれば、まだまだ人間の介入が必要です。その理由は、学習初心者だと一つの変数が入ってしまうだけで大きく「前提条件」が崩れてしまうからです。
その新しい「前提条件」をAIは理解できない。
なぜなら、AIは相手と対話することができないからです。
例えば、サッカーの試合に負けて落ち込んでいて今週は勉強のやる気があまり見られない。
思春期の生徒たちというのは、こうしたことが日常茶飯事ですよね。
ある程度まではAIで構わないと思うのですが、大切な工程はそこからの対話なのです。
相手の立場の意味を理解するのと同時に、こちら側の「やること」の意味を伝えていく。
そのことによって導き出しているのは、実は「最適解」ではなくて「納得解」です。
「納得解」があれば、人はがんばることができます。
これが最も肝心な点なのですが、この肝心なことがAIは苦手だということです。


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