Vol.232 音楽を聴きながら勉強することの是非
2021年11月23日更新
本記事では、たくさんの方の長年の疑問に答えたいと思います。
それはズバリ、「音楽を聴きながら勉強することは良いのか、悪いのか?」という問いです。
人生、誰もが一度はこの悩みに直面したことがあるのではないでしょうか。
結論から言うと、音楽を聴きながらの勉強には向き不向きがあります。
第一に本人の性格による向き不向きがあり、第二に音楽のジャンルによる向き不向き、第三に学習内容による向き不向きがあります。
お時間のある方はぜひGoogleなどで「音楽を聴きながら勉強」と検索して調べてみてください。
肯定派の代表的な意見は以下のようなものです。
・気分が高揚し、勉強のやる気が高まる
・音楽を聴くと脳内にα波が発生する。α波には記憶力や集中力を高める効果がある
・周囲の余計な雑音を遮断する効果がある。これを「マスキング効果」という
多くの記事が決まって上の順番で書いてあることについては、深くは詮索しないようにします(笑)
音楽を聴くことが勉強や作業に良い作用をもたらしたという研究結果は、実は数多く存在します。
その根拠として代表的なものが上に挙げたような理由なのですね。
否定派がどんなことを言っているのかについてはここでは書きません。
ただ、どうも否定派の旗色が悪いというか、科学的根拠に基づく肯定派に比べて、昭和おじさんの道徳論のようになっている点が気になります。
こういうことは道徳論ではなく、専門家の意見や研究結果を示してもらいたいところですよね。
真実は先に述べたように「向き不向きがある」です。
一つ一つみていきます。
■本人の性格による向き不向き
このことについての情報は非常に少ないのですが、理化学研究所で脳と音楽の関係性について研究されている宮崎先生のインタビュー記事に具体的な回答があります。
上記記事から該当箇所を引用させていただくと、
「先行研究で、社交的な人はアップテンポの音楽を聴きながらのテストで、読解力、短期記憶力の成績が上がり、無音状態ではそれらの成績は下がることが明らかになりました。逆に、人見知りするような内向的な性格の人がアップテンポの音楽を聴くと、それらの正答率が下がるという結果に。また神経質な人も、無音状態の方が成績がいいことも分かっています」
と述べられています。
また別の話になりますが、こちらの海外記事では「退屈傾向」という切り口から、向き不向きが紹介されています。簡単に言えば、物事に退屈しがちな人は外部刺激に敏感なので、音楽がパフォーマンスに悪影響を与えることが多いとのことです。
2つの話をまとめると、
外向的、退屈しにくい性格 = 向いている
内向的、退屈しやすい性格 = 向いていない
となります。
高校生以上になれば自己観察である程度まで判断できると思います。周囲は音楽を聴きながら勉強していても自分には合っていない可能性がありますので、合わないと思ったら止めましょう。
中学生に自己判断させるのは時期尚早な気がします。
■音楽のジャンルによる向き不向き
こちらは2012年の海外研究結果から。
単純明快な結論です。歌詞のある曲だと作業効率が下がるとのこと。
■学習内容による向き不向き
最後は脳の仕組みから。結論から言うと、音楽を聴きながらの勉強が向いているのは易しい内容に取り組んでいる場合のみ、となります。脳には「ワーキングメモリ」と言って、情報を一時的に保ちながら操作する能力があるのですが、数学の複雑な応用問題を解いているときなどには、これを大量に使うことになります。このときは脳に入る情報を極力減らした方が良いとされており、音楽も例外ではありません。また、何かを暗記しているときにも「ワーキングメモリ」は多く使われるため、暗記中も音楽はあまり聴かない方が良いでしょう。
まとめると、中学生の場合は音楽を聴きながらの勉強がデメリットになるケースの方が多いように思います。音楽を聴きながらの勉強は、ある程度、自分を客観視できる年齢になってから慎重に導入されることをお勧めします。