Vol.278 環境選びは難しい

Vol.278 環境選びは難しい



2022年10月11日投稿
2022年10月11日更新



勉強が上手くいくもいかないも、かなりの部分は「環境」に左右されます。
これは子ども本人の努力とは無関係の前提であり、その前提条件の中で子どもたちは自分にできるベストを尽くすことしかできません。
人間が「環境」そのものを変える力を持つようになるのは、一般的には自立期以降でしょう。
(子どもからすると)「環境」に従うしかない状態=子育て期と言えるかもしれません。
子どもが自立するまでの間、適切な「環境」を用意するのは親の役割ということになります。
ここで適切な「環境」とは何かについても、正しく定義をしておく必要があると思います。
これははっきりとしています。
適切な「環境」=「最適」の「環境」です。

最高ではなく最適

例えば、東大は「最高」の大学かもしれませんが、万人にとって「最適」の大学ではありません。

「最適」を見つけ出す前提は、自分の子どものことをどれだけ正確に理解できているかです。
物事を正しく理解するには、通常、比較対象が必要です。
比較の中でその子特有の個性が見えてくるものです。
しかし、親の立場からすると、これが非常に難しい。
その理由は、主に3つあります。

①「想い」で認知が歪む
子どもへの愛情が強ければ強いほど、残念なことに、冷静かつ客観的に子どもを見ることが難しくなります。「こうあって欲しい」という願望や「こうなってしまったらどうしよう」という不安が、子どもに対する正確な認知を歪めます。

②比較対象となる情報量が足りない
比較して何かを判断するには、理想的なことを言えば、100を超える情報量が必要です。
試験の点数分布程度の情報なら入手できても、集中力の持続時間や記憶力、興味関心の対象、チャレンジ精神の有無や自己統制能力など、その子の本質を深く理解するために必要な情報は入手できません。余談ですが、本人の「自信」の度合いは判断材料としてかなり重要です。

③入手情報に偏りがある
母親同士の情報交換などで、他の子どもがどうであるかを知ることもあるでしょう。ただ、その情報は偏っていることが多いものです。「美希ちゃんは洋書を原文のまま読んでいるらしい」や「裕二くんは学校の授業中に立ち歩いているらしい」のような両極端に偏った情報が断片的に入ってくるのです。「ふつう」がどうなのかという情報が最も大切なのですが、普通の話は会話としては面白くないため、そこまで熱心に情報交換されることはありません。

結果として、自分の子のことはよくわからない※ということになりやすくなります。
※自覚しにくいので「わかっているつもり」が最も危険です
このことで困るのは最適な「環境」選びができなくなることです。
親や社会が与えた「環境」という前提条件を普通の子どもはひっくり返せないので、そこが合っていないと「何をやってもダメ」状態に陥ることがあります。本人の努力では解決不可能ですから、こうなると「環境」を変えてあげるしか打開策はありません。

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