Vol.279 速く走れることとベストを尽くしていること
2022年10月18日更新
10月16日(日)に、一般向けの「次年度向け都立高校受験必勝説明会」とプラスジム中学3年生保護者様向けの「冬の高校受験説明会」を同時開催させていただきました。
お忙しい中、ご参加くださった皆さまありがとうございました。
それらの場で公式には初めて、プラスジム一大ニュースの発表をさせていただきました。
内容については近日中にホームページでもご案内させていただきます。
「冬の高校受験説明会」の中で、脳と運動の関係について取り上げました。
と言っても、私はその分野の専門家ではありません。
詳しいお話をさせていただくかわりに、その分野の読みやすい書籍を紹介させていただきました。
脳科学に関する書籍は年に数冊読む程度ですが、どの書籍を読んでもほぼ間違いなく書かれていることがあります。
それは、「運動が脳に良い影響を与える」ということ。
最近だとスウェーデンの若手精神科医のアンデシュ・ハンセン氏の『運動脳(サンマーク出版)』※という本を電車広告でよく目にします(※説明会では数年前に出版された『一流の頭脳』を紹介させていただいたのですが、新版になってタイトルを変更されただけで、同じ内容のようです)。
ただ、脳と運動の関係について、私が最初に興味を持つきっかけになったのはこちらの書籍ではありません。『脳を鍛えるには運動しかない(NHK出版)』というそのものズバリのタイトルの書籍が先で、初めて読んだのは10年以上前であったと記憶しています。説明会で紹介させていただこうと思い、ひさしぶりに読み直してみました。
そうすると、脳と運動の話とはまったく関係のない大発見がありました。
「あー、ここに書いてあったのか!!!」と、、
頭の片隅にそのエピソードはずっと残っていたのですが、どの書籍に書いてあったかを完全に忘れてしまっていた話を見つけたのです。
私の教育観を形成する上で、間違いなく影響を及ぼした話です。
エピソードとして取り上げられているのは、アメリカのイリノイ州にあるネーパーヴィル203学区で採用された体育プログラムです。簡単に言えば、授業に運動を取り入れることによって、その学校の生徒たちの学業成績が飛躍的に向上した、といった内容なのですが、私が目から鱗が落ちる思いをさせられたのは、その点ではありません。
主役はフィル・ローラーという体育教師なのですが、彼は心拍数に着目することで、体育の授業に革命をもたらしました。
ここからは書籍から引用させていただきます。
さっそくその週、生徒たちが走るときに、体型はスマートでも運動が苦手な六年生の女の子にその心拍計をつけさせてみた。その記録をダウンロードしたローラーはわが目を疑った。「彼女の平均心拍数は一八七だったんです!」十一歳ということは、最大心拍数はおおよそ二〇九なので、彼女はほぼ全速力で走っていたことになる。「ゴールした瞬間は、二〇七まで上がっていました」と、ローラーはつづける。「おいおい!嘘だろう?思わずそう言っていました。いつもなら、その子のところに行って、もっと真剣に走らなきゃだめだ、と注意していたところです。まさにそのとき、計画全体に劇的な変化が起きたのです。その心拍計がすべての出発点となりました。思い起こせば、教師がほめてやらなかったせいで、どれほど多くの生徒が運動嫌いになってしまったことでしょう。実際のところ、体育の授業であの女の子はだれよりもがんばっていたのです。」
ローラーは、速く走れることとベストを尽くしていることは、必ずしもイコールではないということに気づいたのだった。『脳を鍛えるには運動しかない(NHK出版)』P25より抜粋
すべての教師の使命は生徒にベストを尽くさせることです。
(それ以上に何ができるのでしょうか)
本人なりにベストを尽くしているのに、結果が出ていないという理由で否定されることを繰り返せば、その先に待っているのは絶望しかありません。
表面的な結果だけをみて相手を否定しないこと。
がんばっていないように見えるからと言って、必ずしもがんばっていないとは限らないこと。
教える立場の人間は常にそのことを忘れてはならないのです。