Vol.136 使える条件は全部使う

Vol.136 使える条件は全部使う



2020年01月14日投稿
2020年07月14日更新



誰かの成績を伸ばそうと思ったとき、選択できる手段を2つにわけることができます。
一つは直接的な手段、もう一つが間接的な手段です。
直接的な手段とは、教師の場合であれば自分で勉強を教えることです。
間接的な手段は、それ以外のあらゆることです。
これら両方の手段を合わせて考えなければ、成績はなかなか伸ばすことができません。

遺伝、家庭環境、幼少時の育てられ方、生活習慣、過去の習い事、自信の有無・・
今の学力は、こうした様々な要因が複合的に重なり合って生まれています。
学校の勉強がわからなくなって数年経ってしまっているような場合は病状も深刻ですから、そう簡単に成績を伸ばすことなどできません。学校進度が止まってくれるのであれば何とかなるかもしれませんが、学校の勉強はどんどん前に進んでいきます。少しテコ入れした程度では現状維持が精いっぱいでしょう。
こうした状況を何とか打破したいと思ったとき、賢明な教師であればあるほどに「自分ひとりの力ではどうにもならない」という事実を冷静に理解します。気合いと根性の熱血指導で突っ込んでみたところで、どうにもならないものはどうにもならないのです。
深刻な学力停滞の原因の中には、幼少時から積み重ねてきた悪い習慣の蓄積によるものなどもあります。時間にして数万時間かけてそうなってしまったものを、週に数時間、自分ひとりの指導でなんとかするのは難しいのです。
こうなってしまった場合は、その子の持つすべての条件を「成績を伸ばす」ために使えないかを冷静に考えることが大事です。
しかし、「自分が相手を変えてやりたい」という自意識がそれを邪魔します。
教師の場合で話をしていますが、ご両親の場合でもまったく同じです。
「自分ひとりで子どもを何とかしなければ」という意識を捨てることです。
そうすると、子どものために本当はどうあることが理想的なのかが見えてきます。
まず、最初に言えることは相手が思春期の子どもである場合、それは「勉強しなさい」と言って机に座らせるようなことでは決してないということです。

Vol.106 勉強しなさいではダメな理由

そうではなく、子どもの話をよく聴き、その子を取り巻く諸条件についての理解を深めることが最も大事。何の話をしているときに子どもの瞳が輝くのか、何の話をしているときに子どもの瞳に陰ができるのかを注意深く観察することです。とりわけ、子どもが誰を尊敬していて誰の影響を強く受けているのかを知ることはとても大事です。その誰かが相談できる相手なのであれば、その誰かを通じて、子どもに何かを伝えてもらうことも有効な手段と言えるでしょう。
個別指導の良い点は、対話を通じて生徒の背景を知ることができることです。
勉強を丁寧に教えるためにそういう形態を取っていると思われる方が多いですが、本質はそこではありません。生徒に対する理解を深め、その生徒の条件に合わせた指導ができてこそ本物の個別指導です。
生徒の「尊敬している大人」のポジションを獲れれば、指導は格段にしやすくなりますが、別に尊敬されていなくても間接的に生徒の成績向上に貢献することはできるということです。


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