Vol.234 親の方が先に音をあげる

Vol.234 親の方が先に音をあげる



2021年12月07日投稿
2021年12月07日更新



「親の方が先に音をあげる」
この記事は書くかどうか迷ったのですが、大事なことなので書きます。
なぜ迷ったのかというと、プラスジムに通われる保護者様に「ひょっとして私のこと?」と思われるのではないかという懸念があったためです。
ご安心ください。
「私のこと」ではありませんし、特定のどなたかを想定して書いている記事ではございません。
この時期、よくあるお話なのです。
「どこの親も同じように悩むのね・・」ということを知っていただくために書いています。

そもそも、冒頭の言葉は私のものではありません。
現在、日本テレビで放映中『二月の勝者-絶対合格の教室-』のコミックス版で出てくるセリフです。ちなみにこちらの漫画、学習塾業界に詳しい私から見ても、非常に丹念な取材に基づいた作品であることがわかりますし、良書だと思います。塾の説明会で紹介させていただいたこともありますが、受験生の親は一度読んでみることをお勧めします。
受験をテーマにした作品だと『ドラゴン桜』や『ビリギャル』が有名ですが、エンターテインメント要素が強く、わが子の受験の参考にするのは少し難しい。
親が読んで最もためになりそうな作品が、こちらの『二月の勝者』だと思います。
舞台が吉祥寺、というのもプラスジム的にお勧めポイントです。

211207blog_01

出典:『二月の勝者 -絶対合格の教室-』第7巻59話より   


「中学受験での」となっていますが、高校受験も同じです。
親子で受験に真剣に取り組むと、この時期、とてもよくあることなのです。
本人も塾も合格を信じてがんばっているのですが、親の方から「志望校のレベルを下げた方がいいのではないか」「私立で良いのではないか」と挑戦を避ける方向にどうにか舵を切ろうとされるのです。
「誰かを信じて待つ」というのは簡単なことではありません。
それはすごく良くわかるのですが、最後の最後までその子の可能性を信じて待ってあげるべき存在が誰かと言えば、それは親をおいて他にいないのではないでしょうか。
もちろん、その期待が裏切られることはあります。
裏切られて、裏切られて・・。
それでもあきらめず、次の良い未来を信じて待つ。
そうした親の関わり方から子どもが何を学ぶかと言うと、簡単にあきらめない心です。

信じることができなくなるのは、子どもの「才能」か「努力」のどちらかです。
『二月の勝者』で描かれているのは、必死に頑張るもなかなか望むような結果が得られず、親のメンタルが先にやられてしまうストーリー。
これは子どもの「才能」を信じることができなくなるケースです。
どちらかというと女子生徒に多いです。
親にきちんと甘えることができていることの裏返しでもあるのですが、不安や悩みをどんどん頼りにしている親にぶちまけますから、親の限界が先にきてしまうことに。
「がんばっても、この子には良い未来(合格)はやってこないのではないか、それならいっそ・・」
と親から先に勝負から撤退しようとします。
教育的見地から言えば、これは非常にもったいない判断であると言えます。
どんな物事であっても、子どもが必死に何かに取り組んでいる時間。この時間には値千金の価値があり、親がそれを望んだからと言ってそう簡単に手に入るものではありません
この行為は「努力」の否定でもあり、すぐにあきらめる子になってしまう危険性もあります。

もう一方は、子どもの「努力」を信じ切ることができなくなるケース。
男子生徒に多く、子どもに対して言うことはどの親も同じです。
「本当にその学校にいきたいのであれば、もっと必死な姿をみせなさい」
このように論陣を張って、子どもに受験校を下げさせようとするのですが、これは受験生の子どもからすると、親からもっとも言われたくない言葉の一つです。
同じ家の中にいますから、立場は子どもの側が圧倒的不利。
スマホを触ることも、テレビを観ることも、ソファーで寝転がることも、友達と遊ぶことも・・、その先には常にこの言葉が待っているとするとどうでしょうか。
私が中学生なら家出します(笑)
勉強だけを集中してやり続けることなど、ほとんどの中学生には不可能です。
悲壮な表情をして寝る間も惜しんで受験勉強するなら認めてやると言わんばかりなのですが、そうしたマイペースな子に自分と同じ危機感を求めることに無理があります。

Vol.138 子どもが焦ると親は安心する

もちろん、口出ししたい気持ちをぐっとこらえて毎日過ごされていることもわかっています。
だからこそ、しんどいわけです。
志望校を下げれば、こうした不安や苛立ちから解放されてラクになることが出来ます。
しかし、それは親が率先してやるようなことなのでしょうか。
子どもは「努力」していない、したくないのではないのです。
成長途上であるため、「努力」しようとしているけど、上手くできていないだけなのです。
親の目からは、そうは見えないかもしれませんが、そのことを認めてあげてください。
挑戦するかどうかは本人の意志を尊重すべきです。
「私立高校は経済的に無理」のように状況が挑戦を許さないのであれば、そのように正直に子どもに言えば問題ないと考えます。ただし、本音は「自分がしんどい」であるにも関わらず、そのように他の理由のせいにして説得を試みると大失敗しますから気を付けてください。子どもはそういうところは非常に敏感ですし、親の本音はすぐに見破られます

現実直視と勝利の可能性があるにも関わらずあきらめること、は違います。
子どもの望む未来を実現するための道筋を、ぜひ最後まで一緒になって探ってあげてください。


この記事をシェアする