Vol.164 失敗させない教育
2020年07月28日更新
『ビリギャル』を読んでも、誰もが慶応大学に合格できるわけではありません。
成功はそこに至る道筋が無数に存在し、完全な模倣が困難なものだからです。
「偏差値35からトップ校合格!」のような飛び抜けた成功体験となると、「才能」や「タイミング」のように再現不可能な要素も関わってきます。
その一方、失敗に至る道筋にはパターンがあり、失敗回避の方法であれば教えることができます。
そのことによって、生徒に価値のない失敗をしないようにさせることができます。
価値のない失敗を回避すれば、人生の損失(精神的疲労や時間)が減ります。
余談ですが、「学歴」を手にすることもある意味では人生の失敗回避策です。
実社会において、他人の信用をすぐに得ることは困難であり、信用を得られないために不快な思いをすることがあります。あるいは信用してもらうために相手と時間をかけて関係性を築く必要があります。
「学歴」があれば、そのような苦労をしなくて済むかもしれません。
人の信用を得られずに苦労することは価値のない失敗に該当します。
予見可能かつ、世間一般的によくある話だからです。
困難そのものが問題なのではありません。
ここでの問題は「きちんとした人間だ」と認めてもらう最初のハードルを越えるのに消耗している間、ライバルは好きなことに時間を使えるということ。
精神的・時間的余裕がある分だけ、自分だけの「強み」を磨くことができるのです。
学校にせよ学習塾にせよ、価値のない失敗をなるべく回避させ、生徒の人生を安定軌道に乗せることが得意な教場で必ず大切にされていることがあります。
それは、「しつけ」の存在と「決め事」をきちんと守らせることです。
その「徹底」の差が、教場の実力の差です。
「しつけ」と言うと、「靴をそろえる」とか「あいさつする」とか礼儀作法を繰り返し指導するようなイメージがありますが、そこが何らかの「技術」を教える学校であった場合、その「技術」習得のために必要な作法を徹底させることも「しつけ」と考えていただいて構いません。
例えば、そこがギター学校であれば練習前に必ず弦のチューニング(ギターの各弦を決められた音の高さに合わせること)させることは、教育的観点から見れば「しつけ」に相当します。
「決め事」とは「規則」のことです。
一般的に「規則」というと、集団生活を機能させるために定められた事柄や手順を指しますが、「20時以降はスマホを触らない」のような「自分への約束事」あるいは「先生との約束事」「親との約束事」のようなものも「規則」に含まれます。
「規則」と言うと、前者をイメージされる方が多いので、「決め事」と表現しているに過ぎません。
何も難しい話ではなく、自分で決めたことをきちんと出来る大人になりましょう、ということです。
価値のない失敗を防ぐための基本的な方針は計画的に行動することですから。